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この小説は、室町時代の奈良を舞台にしています。 主人公は、大乗院門跡の経覚。 彼は摂関九条家の生まれで、関白の子です。 当時の習いとして、十代から奈良興福寺に入り、わずか数年で大乗院門主、三十歳そこそこで興福寺別当(寺院のトップ)となりました。 実質的な大和国の王であって、貴種ならではの出世コースです。 その割に彼はかなり破天荒というか、自由闊達な性格だったように思われます。 興福寺に何の縁もない天竺人の子孫を弟子に取るなど、そのすさまじい闘争心もあいまって、
奈良の、なら、という名前は、「ならす」「平である」というところから来ているそうです。 「平城京」も「ならのみやこ」であって、「平」という字に「なら」という読みが当てられているくらいです。 しかし実際そこに住んでいると、「奈良ってほんとに平らな町か?」と思うことが、しばしばあります。 確かに、長崎とか尾道(行ったことありませんが)みたいな、いわゆる「坂の町」とは違うでしょう。 近畿圏で言っても、山と海に挟まれた神戸という所は、ちょっとばかり北へ歩いただけで、どこでも