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空想小説14『大切なもの』

あの子が泣いていた。
「どうしたの」
「大切なお菓子を落としたの。せっかく貰ったのに」
「そう」
「大好きな人がくれたのに。食べたかった」
ぽろぽろ涙を流す。
可哀相になって、買ったばかりのチョコを差し出した。
「あげる」
「それは君のだよ」
「じゃあ半分こだ」
真ん中でパキッと割って渡す。
「ありがとう…優しいね」
「普通だよ、こんなの」
照れくさい。でも嬉しい。
「お菓子、一緒に探そうよ。見つかったら、ちょっとちょうだい」
「言うと思った」
あ。
笑顔になった。
良かった。
友達が悲しいと自分も辛い。
「ちなみに、どんなお菓子?」
「アップルパイ」
「えっ?それは大変だ、早く探そう」
慌てる自分を見て、また君が笑った。
嬉しいな。
それくらい僕は。

君が大切なんだ。

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