休診日に無断駐車・・・看板記載で罰金請求は可能?|診療所のトラブルQ&A #2
「2023年2月の記事を復刻掲載」
こちらの記事は、2023年2月に公開されたものです。
大人気の連載企画を改めてお届けします。
診療所でのトラブルに関する質問に、本山総合法律事務所代表の宇佐美芳樹弁護士にお答えいただく連載。
今回は「休診日に無断で駐車され困っています。看板に罰金と記載したので請求しても良いのでしょうか?」というご質問にお答えいただきます。
無断駐車の罰金は請求できる?
「罰金をもらい受ける」という看板を設置したとのことですが、罰金というのは国家が国民に対して課すものです。したがって「罰金をもらい受ける」と一方的に宣言しても、不法駐車をした人から宣言した金額を支払ってもらうことはできません。
「罰金」記載の看板を見て駐車・・・契約に基づき請求できる?
それでは、看板を見て車を停めたので「支払うことに承諾した」として、契約に基づき支払ってもらうことはできないのでしょうか。
例えば、コインパーキングでは「30分ごとに〇円」などと記載された看板が設置されています。これは契約の申し込みと考えられています。
そして、コインパーキングに駐車をした人は駐車した時点で上記申し込みを承諾したものとみなされます。
そのため、駐車した時点で契約が成立し、駐車した人には駐車料金の支払い義務が生じます。
今回のケースでも、同様に考えることはできないかが問題となりますが、コインパーキングに停めた人とは違い、不法駐車をした人はお金を支払うことを承諾して車を停めたとは考えにくいことから、契約が成立したとは認められないと考えられています。
したがって、契約に基づき金銭を請求することも難しいです。
一切何も請求できない?
それでは、一切何も請求できないかというと、そういうわけではありません。
あなたの敷地に他人が無断で駐車する行為は不法行為に該当します。
そのため、不法行為に基づく損害賠償請求をすることは可能です。
したがって、今回のケースのように不法駐車をされた場合には、ナンバーから住所を特定するなどして不法行為に基づく損害賠償請求で対応することになります。ただし、あくまでも「損害」の賠償請求ですので、請求できる金額は、看板に記載した金額ではなく不法駐車をされたことにより実際に発生した損害額になります。
この点、平日の営業時間内であれば、不法駐車により営業損害が発生するケースもあるため高額の賠償請求となる可能性がありますが、今回のケースのように休日ですと、発生した損害はせいぜい土地を利用できなかった損害にとどまります。
したがって、損害額としては、土地利用料相当額(付近の駐車場の1時間当たりの駐車料金×不法に停めていた時間程度)になる可能性が高いでしょう。
以上のことから、対抗手段としては不法行為に基づく損害賠償請求がありますが、費用対効果の点で二の足を踏まれる方も多いのが実情です。
コインパーキング形式を選択している診療所も
最近では医院の駐車場でもコインパーキングの形態をとって、医院を利用した患者さんは無料とする医院も多く見受けられますが、このような理由によりコインパーキング形式を選択しているところが多いのではないでしょうか。
なお、我が国では自力救済は禁止されているため、不法駐車をされたからといってタイヤをロックするなどすると、自動車に傷をつけたとして損害賠償を請求されたり、器物損壊で刑事告訴されたりする危険性がありますので気を付ける必要があります。
著者:宇佐美 芳樹
本山総合法律事務所代表弁護士。
愛知県弁護士会所属。
労務管理、労働トラブルの解決、債権回収、クレーマー対応、契約書のリーガルチェックなどの企業法務を中心に、離婚、相続、交通事故まで広く民事商事全般を取り扱う。クライアントの声に耳を傾け、粘り強く最良の解決方法を探っていくことを信条とする。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?