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なんかタイトル忘れちゃったナ

うそだろ。

俺はあの瞬間、その寿司一貫と対面した時。心のなかでそんなことを思った。
あれは絶望にもにていた。こんな理不尽を抱えてなお強く生きようとするアドゥ。
それでも俺は、こいつの気持ちに寄り添う力量は持ち合わせていなかったのだ。
これは俺が二度目の人生の岐路に立たされた時の話。そう、時は一月前に遡る。
あのクソタコすけを経験した俺は、この無駄な時間を何処かで挽回せねばと思っていた。
竿美は相変わらず自転車屋の2つの車輪を掌の上で転がしているだろうし、進捗報告をし合うと言った手前、俺は自ら刺激の海に脳直でダイブせねばならなかった。幸いにも、アドゥからは連絡が来ていた。
俺は実を言うと下の名前が性格と見た目に対してとっても可愛いのだが、これはこのあと話す気持ち悪い話に重要なので頭に入れておいてほしい。

普段はだいきちで通しているが、ここでの俺は今からきちたん💓である。

タコすけに都会の海に放流された俺は、その翌日に次の予定を取り付けてきたクソタコに「センスなさすぎて草。お前の面で少女漫画のイケメンを演じないでください😅🖐️男から来たらクソうざい顔文字ランキング上位にはいる2つをふんだんにつけてご返信。
その後なにやら電話がきて、女の癖にうんたらかんたらのうまくさまんだばざらだんかんとか不動明王も苦笑いの真言を言ってきたけど、なにせ俺は煽り耐性は母譲りである。
「うんうん、いっぱいおはなしできてえらいね。ばいばい☺️」と最後まで母性(笑)を滲ませてブロック。
なめるなよタコすけが。
さっゴミ捨ても終わったし切り替えていっこー!★と幼女向けアニメの主人公のように爽やかな笑顔でラインを開いたら、アドゥからメッセージがきていた。
しかも俺がタコすけと遊ぶ約束を取り付けたの日である。仕事以外の連絡は俺の指先のご機嫌伺いをしながらじゃないと返せないほどなので、既に一週間は返していない。
おっとこれはやばい、俺はもはや小説のネタ探しに植えていたので、しおらしく「アドゥごめんね、俺っち忙しくってテへペロ🥴と舐めてる返信をかました。
返信遅い時の常套句を駆使したのにもかかわらず、平日の午前中に既読が付き、速攻アドゥから返信。恐ろしいことに一分とたたないでだ。仕事しろよ。

「きちたん💓下の名前きちこっていうんだね。トッテモ似合ってて可愛いです😌💯返信返してくれて嬉しい!僕は何時でも暇ダヨッ」

おやおやおやおやおや

ッスーーーーー(深呼吸)
おもしれ一男(絶望)
俺はこんなに爆速で頭からしたまで血液って下がるんですねと思うなどした。

「えーきちたんってよばれたことないから普通に苗字にさん付けでよんでくれていいよ」

俺はネタの森を前に足踏みをする新参者冒険者の心地である。この森はやばい
(小並感)


「きちたん♥ぼくのなかできちたん♥は特別な人🫣ジッ.....になってほしいから////」

夢小説描いてらっしゃる?????

スラッシュ多用とか中身のない夢小説でよく見るpixivの2次創作エロとかで(確信)

「でもきちたんはないよ〜会場でそんな話してないのに距離ちかくない?」
「アララ😅怒っちゃったカナ?でも大丈夫♪きちたんが女の子になるのは僕の腕💪の見せ所だからネッ

えっむりすぎオブザイヤー20XX(脳直)


えっごめん酷いこと思って。ちょっと一旦落ち着きましょ?あれだな。一月ほど呼吸とめてほしい。😲

まさかキモさが天元突破する男と出会うなんて世にも奇妙な物語すぎて俺ちょっと泣いちゃうかもしれない。

俺はこんな具合に話の通じない男がこの世で一番きらいやし、大体元彼はみんなこのタイプなのでもはや運命の出会い???
竿美にアドゥが覚醒したむねをおくると、振る舞いが童帝のそれ。と返事が来た。

帝っておまえ頂点やん。上位種に俺がかなうわけないじゃんか(絶望)

しかしアドゥは俺の年上(衝撃的事実)なだけあり、こ3時間程連絡を途絶えさせていたら、勝手に暴発しはじめた。

「きちたん💓ぼくはきちたん💓とラインしてると会いたいがバクハツしちゃうから🥺💦とりあえず毎週木曜日に連絡するね!デートはまかせて💓夢の国に連れてってあげるから😤🏰」

拉致られる。夢の国(隠喩)にお持ち帰りされる。テイクアウトだいきちされる。

俺はとりあえず「あっす」とだけ返した
身長なんてシルバニア◎アミリーのなかにいても違和感ないくらい小さくて丸いフォルムをしているくせに、心のなかにとんでもねえ化け物を飼っている。
やべえ、もうやべえ一周まわって面白い。運命の出会いすぎる。この俺に動悸を味わわせるなんてほんとお前、おもしれ一男(号泣)

でも時に冒険者とは未開の地に足を踏み入れねば名乗れない職業である。

つまりたったひとつのワンピースを見つけるために、ときに踏み出す勇気も必要というわけだ。
俺はもう死にかけていたけど、でも一度もデートしないで終わるのは忍びないかと妙なところで律儀を発揮してしまったわけである。

とりあえず俺はアドゥとデデニーラソドに行くことにした。
この日まで、俺は期待と悪寒が同居するというはなかなかに体験できない感覚に身を任せることになる。デデニーラソドに行くことが決まってから、毎日送られてくるアドゥの自撮り。どの角度からとっても紙幣になりそうな未来しかない。
なにせアドゥは徳の高い顔をしてるし、年上だし。俺は距離を保つには敬語が敬語が大切かもしれないと、急にラインの態度を変えたわけである。
そしたらアドゥのなかで緊張しているきちたん💓が出来上がってしまったのでこの策は俺の首を絞めるだけやった(大泣き)

竿美、やっぱだめだよ。池袋はだめだって。

もう選べる地獄やんこんなの。
こんなメンタル負け確のデートなかなかないて。階段踏み外した婆さんを抱きとめて威嚇されたときと同じ理不尽さをかんじるよ俺。そして、アドゥと新宿に待ち合わせた俺。うそだろ新宿からいくの????何話すの???うそだろ??と、ぎりぎりまで竿美にアドバイスを求める俺。
竿美は「骨はもらう🖐️」とだけ返信してきた。
骨は拾うだ馬鹿野郎が。
そして新宿に現着、自分いまから死地に向かいます上官と、いもしない上司に十字を切りたくなる始末。
アドゥはいた。ボロッボロのペンギン柄のリュックに、愛は地球を救いそうな花柄のシャツにデニムのハーフパンツ姿で。

「きちたん💓スタバかっておいたよ💓飲みながら行こうね💓」
「アヒっアッ、アッス」
「きちたん💓をおもってバニラフラペチーノにしたよ💓」

ママあああああ(大泣き)!!!!!!!!俺は!!!バニラが!!!!!いちばん!!!!!きらいいい!!!!!!!!

心の中の幼女が、エッエッと肩を震わせてないていた。このままこいつ一人だけ改札を通った瞬間に逆走して逃げてやろうかとおもった。しかしだめだった。アドゥはびちゃっと俺の手を握ってきたのだ。ホットタオルでももうちょっと絞ってある(困惑)キッチンの台布巾レベルでびちゃっとしてる手だ。

あひい。俺は未だかってないほど肩を持ち上げながら歩いた。これは仕事、これは接待だ。そう思わないと本当にやっていられない世界だった。もしかしたら俺は、異世界に来たのかもしれない。知らないところで解像度が高まっていく。同じ言語を介しているはずなのに、心が通じ合わない。
もしかしたら、アドゥは人外攻めだったのかもしれない。俺の中の解像度がどんどん(以下略)

そして京葉線に乗り込んで、事件は起こった。

いや、勝手に事件にしたのは俺だから傍から見ては事件じゃねえかもしれねえんだが、事件はおこったのである。
アドゥがリュックからタオルを取り出したときに見えてしまったのだ。
それは一冊の雑誌。幸せな2人が、恥じらいながら本屋に寄って手に取るであるうゼ◎シイ。いっそan・anならまだよかった。ゼ◎シイ、てめえはだめだ。しかもなにか紙が挟まっている。まってくれこれはまってくださいこれ(困惑)
ああああこわい!!!夢の国ってなに!?どこの夢の国のはなししてるの!?

お前のリュックはなんでそんなにペンギンが散りばめられてるの!?なんなの!?隠し撮りしないでよピースじゃねえよおいこらマッマーーーーーーーーーーー!!!

デデニー行きのモノレールで当然叫べるわけもない。特に特に会話をしないまま、冷や汗をかくだいきちが運ばれていくだけである。
「チケットはおごるね、初デデニーデートだから、今回は僕がおごるね
大事なことなのかもしれん、こいつは確かに2回言った。
「うん、今回だけね」
だいきち は しこうが ていし している
「実はレストランも予約したんだ。ほんとはミラコスタもって思ったけど、それはまだ早いかなって」

俺がお前の息の根を止めるのとどっちがはやいだろうか。

おおお......おおおお....俺は意味のない声を発しながら、とりあえず微笑ん
だ。奴は照れていた。
このときばかりはデデニースタッフはんの顔を見てもワクワク感はないのである。むしろ俺を今すぐその手で仕留めてくれとすら思っていた。
そしてやつは、一歩踏み入った瞬間から抱っこちゃんになったのである。
俺の腕に急にしがみつくアドウ。
おおお.....!!!おおおおお......!!!!
「今日はもう......ここから離さない......
☺️💓
「おおお......!!!おおおおおおお!!!!!」(大泣き)

こんな汚いち◎かわ見たことないよお(大泣き)

そこからは地獄だった。レストランの予約時間まで園内を回遊したのだが、おそらく楽しんでいたのはアドゥだけ。俺はというと、右手に重心が傾いていたので、肩が下がり首が変な状態で傾いていたのだ。
恐ろしいくらいの苦痛が、肩こりによるものなのかはわからない。俺よりも小さきおじ(俺よりも2歳上だっただけだが、おじさん構文なのでおじと呼んでいた。)は、きゃっきゃうふふと実に楽しそうである。

「きちたんきちたん、あそこにメッキーがいるよ。僕とどっちが可愛いかなあ」
「メッキー」
「ならライバルだね!」
「おおおおおおお……(怯え)」

アドゥの関節技基腕拘束園内引き摺りの刑は見事に俺の情緒と精神と肩と首を破壊する。俺の代わりに泣いてくれたのは、一向に食えないアドゥから渡されたオレンジ味のメッキーのアイスキャンディである。
ちなみにそれは俺が押し付けたらあいつが全部平らげた。それも嬉しそうな顔で。

そしてようやく俺はレストランに辿り着いた。これが終わったら帰る、これが終わったら帰ると心に決めた俺である。
レストランでは当然アドゥは離れてくれた。よかった。呪縛から解放された瞬間である。
そして俺は店員さんに勧められるがままに、外のゴンドラが見えるテラス席に通される。
なんか知らんが、ちょっといいコースらしい。アドゥは愛は地球を救いそうなシャツに白い布をつけ、「きちたん、今日は特別な日だね……💓」とねっとり微笑まれる。
俺はもう、「おおおお……」としか言えなかった。言葉を忘れた哀れな獣に成り下がったのは俺の方であった。
さあさっさと飯を運んできてくれ。俺はもう帰りたいんや。
アドゥがルンルンに俺の写真を撮り続ける中、なんだか忙しない音楽が流れてきた。どうやら誰かが誕生日らしい。俺は甘い雰囲気に持って行こうとするアドゥに左手を取られ、ひたすらもぎもぎもぎもぎされていた。怖い。
そして料理とともに運ばれてきたのは、でっかいメッキーのぬいぐるみである。
俺はそれを抱き抱えながら歩いてくる店員さんが大変そうやなあと思っていたら、大変だったのはアドゥの頭の方だったのだ。

「おおおおおおお!?!?!?」
「今日は初めてのデートだから、ネッ」
「おおおおおおおおおおおお……(涙)」
二人がけの席なのに、わざわざ椅子を持ってきてくれる店員さん。すんませんメッキー投げ捨てていいんであなたがそこに座ってくれませんかね。俺は割とガチでそんなことを思っていた。
でもアドゥはデデニーのチケットもレストランも、ましてや交通費まで謎に支払ってくれているわけだ。
流石にいくら生理的に無理でも、俺もお返しをしなくてはいけないだろう。借りは返さないといけん。奇しくもおかんの教育のたまものである。
そうしてクソデカメッキーを小脇に抱えてた俺は、またしても右肩にアドゥ、左にメッキーという、拷問以外の何物でもない状況で園内を徘徊。あほだろ、こんなクソでけえ人形持って歩く馬鹿どこにインだよ馬鹿まじ馬鹿!!!
半ば白目をむきながら、俺は「明日仕事早いから今日は帰ろっカナ」と漸く言語を発する。
アドゥはパレードみないの??とかいっていたがクソデカメッキー以下略。
そして俺は疲労から行きのモノレールでの恐怖をすっかりと忘れていた。
アドゥが俺の腕を解放し、凝り固まった筋肉をぐるぐるとほぐす。モノレールはそこそこ混雑しており、それはもう楽しかったね〜というオーラがびんびんのびんだった。
みんながたのしそうで俺も嬉しい。早く帰りたい。
俺はメッキーの後頭部しか見えない視界のなか、もはや心は死んでいた。

「アドゥ」
「アヒっ」ビクゥッ
「きちたんにね、渡したいものがあるんだ☺️」
「アッス」

何回でも言うが、俺の視界はメッキーである。メッキーの黒い後頭部。

「あのね」スッ
「デッッッ」

でひゃぁああぜぐじい!!!!!(悲鳴)
そしてその本の隙間からぬるりとでてくる謎の紙

「きちたん、この恋は一生だとおもうんだッッッ」

ここここここ婚姻とどおげええーーー!!!!!!(困惑)(絶望)(戸惑い)(動揺)(焦燥)

モノレールの中、クソでけえメッキーで顔面の隠れた女への唐突なプロポーズにざわつく車内。指輪じゃなくてよかった指輪じゃなくてよかった指輪じゃなくてよかった!!!!!!!!!広まる浮かれムード、だれかの人生の転機に居合わせたモブ共(ヤケクソ)の興味関心がメッキーに突き刺さる。俺はメッキーの後頭部に顔を半分押し付けながら、絞り出すような声で口にした。

「ほ、保留で」

その後モノレールが止まった瞬間、俺はメッキーを小脇に抱えたまま、アドゥを置き去りにして勢いよく逃げた。
脇目もふらずにダッシュである。なんならトイレ!!!とか言った気がする。
逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ!!某シンジの声が頭の中に響く。

うるせえ黙れ。これは戦略的撤退だぞクソジャリが。

いまだかつていないだろう、モノレールでプロポーズされた女がメッキーとともに脱兎のごとくスピード下車する事態など。
ちなみにアドゥは追いかけてきたが、やつは足が遅いので撒いた。
帰りの電車、竿美に連絡して事の顛末を伝える。

「wwwwwwぐっふふふふふふwwwwwwぶふぉ、っひ、いひひひひっ」
メッキーお前んちの住所に着払いで送るから
「やめろクソお前特級呪物やぞおま」
「おれのぎもぢがおまえにわがるがぁ!!!!!」(悲鳴)
「あひぃwwwww」

ひどい話である。

しかし、唐突なこととは言え不義理をしたのは俺の方である。
帰りの小田急線、アドゥからラインのオンパレ
結局待ち受けを埋め尽くす着信履歴に折り返す俺。

「オツカレサマデス」
「アドゥ!!!!!キチドァンイマドゥクオ!!!!」
「実家ス、アス」
「ンモオオオオドゥシテヒトリデケェッチァウドゥ!!!!」
「アス、急ギノ予定ガアリァシテ」

どんどん小さくなる語尾。ぷんぷんしているアドゥもごもっともなので、俺はセイセイとタイムをもらい、正直に答えた。

「お前と俺今日初デートお!!!!婚姻届ないわあ!!!!!」
「あ、びっくりしちゃったのカナ😅」

脱税した政治家が吊るし上げられた時の心境と多分同じ衝撃を俺は味わいましたよアドゥ!!!!!

「ないわ!!あれはないわ!!さすがにないわ!!ないないない!!」

語彙力を失いながらしっかりとアカンやでを伝えた俺氏。あたまのなかで腹を抱えて笑い転げる竿美をめった刺しにしながら、

「まずは付き合ってからにして!?!?」
「あ、じゃあ付き合って!?!?」

「うん!?!?!?」

「あ、いいの!!うわぁい!!!!」(通話終了)

「まっっってえ!?!?」

おおおおおお!?!?!?(戸惑い)
おおおおおおおおお!?!?!?(スマホ操作)
おおおおおおおおおお!!!!(竿美に通話)

「おおおおおおおい!!!!!」

「うわうるさ。」

因みに竿美に言ったらまたしても大笑いをされた。付き合ってないだろうけど、向こうは多分付き合ってると思ってるよと言われ、またしても言葉を失った哀れな獣爆誕。

「でもいいのかおまえ」
「おおお」
「陰陽師だけで終わるの? 1本だけでおわるの?」
「おお」
「つか最悪を経験しておけば、後は天国やろ。男のハードル下がるでお前」
「顔さえついてればいいと言った俺のハードルってこれ以上下がる余地あるんですね(震え声)」
「顔さえついてればいいっていったのにアドゥは嫌なんだふーん。女に二言ってあるんだふーん
「んんんんんんんん(七転八倒)」

「とりあえず一発かましてこいよ。食わず嫌いはあきまへんで」

たちの悪い食堂のクソババアの爆誕である(憤怒)

ええええ、やってやりましたよ俺は。

「アドゥ!!!!体の相性みるぞ!!!!!!それで付き合うか決めよ!!!!(最低)」
「えっいいのヤッター!!!(大歓喜おじ)」

間違いなくあの瞬間の俺の心はアマゾネスが宿ってたし、俺は何故か半分キレ散らかしながら電話をしていた。もはやどうとでもなれである。
そしていざ尋常に勝負である。竿美は俺の男気を伝えたら、「まじかよ竿の解像度あがるやん(大爆笑)」といって喜んでいた。

世の中に左曲がり以外が有るのかを確認するタイミングである。

ちなみにアドゥは何故かレザーのジャケットを着ていた。俺はもはや面構えは敵陣に乗り込む間者であったので、お手並み拝見と行こうかと悪役みたいなことを思いながらふんぞり返っていた。ちなみに普段の俺はこんなんではない。完全に虚無が心を蝕んでいたので、もはや何も怖くなかったのである。

そして部屋に入り、何故かブラックライトで照らされるイルカたちの絵に温かく出迎えられる羽目になる。とんでもねえ話だよ、いまからおっぱじまるのに、ピンクのイルカがおれに微笑みかけるのだ。

「きき、きちたん♡」
「俺ひとっ風呂浴びてくるから脱いで待っとけ」
「きちたん???」

しおらしいきちたん♡はもういない。義務的にさっさと終わらせて帰ろうとするきちたんしかお前の目の前にはいないのだ。
もはやアドゥを前に恥じらいすら感じず、俺はぽいぽい服を脱ぎ散らかしながらさっさと風呂に向かう。ちなみにアドゥはバスローブもちながらオロオロしていた。そしてカラスの行水でさっさと終わらせると、タオルすら巻かずに登場する俺。もはや男気通り越して日常てきに裸で居るの慣れてますくらいの余裕さをかましているのである。事実まじでほんとにどうでもよすぎて裸が何だったんだ状態である。

「おら寝ろ、てか脱げ。ほらさっさと足開けコラ」
「きちたんぼっ僕もお風呂いってくるけらぁ!!!」

とかいって、アドゥは何故か俺の脱ぎ散らかした服を丁寧に畳んで枕元に置いていた。
もしかしたら育ちがいいのかもしれない。こいつの貴重な一発を、おれは最低なものにするのかもしれんなど、業の深い攻めのようなことを思い始める俺。
しかし俺はもはや虚無である。スマホを取り出すと、ベッドの上で寝転びながらツムツムをし始めた。精神統一なんかじゃない、この間引いたばかりのしんでれらの性能を試していなかったのだ。
もうすぐハートも尽きる頃、アドゥがバスローブを着て風呂から出てきた。そのタイミングで、竿美からツムのハートが飛んできたのである。
アドゥはオロオロしながら、寝っ転がってラインポコポコに移行し始めた俺の隣で正座をした。

「きちたん、お、俺始めてだけどがんばるね!!!」
「俺お前で2本目」
「実質◉女じゃ〜ん!!!」
「キッッッツ」
言いたいことは飲み込んだ、飲み込んだぞ俺。
ッスーーーーー🤦
「あとね、俺昨日お店のお姉さんに手ほどきしてもらってきたから!!俺も実質童帝ダヨッ」

「あ〜〜????????」

お前は一生彼女なんかできねえよ(ニッコリ)


さも当たり前かのように言っていることがそもそも気持ち悪すぎると言うことを理解した方がいい。
とりあえずもう俺は早く帰りたかった。だからパッとやってパッと帰りたかった。もう今日は自分を甘やかしてロマンスカーで帰るんだからとすら思っていた。
そこからは軽くにしておくと、アドゥの息子さんにご挨拶をした時の俺は、頭の中でふっとよぎってしまったのだ。
あ、お店のお姉さん大変だったろうな。こりゃ寿司一貫だわと。

そう、何を隠そう寿司一貫とはつまりそう言うことなのである。

どんなに頑張っても寿司一貫は何も変わらないらしい。しかしアドゥはお店のお姉さんにはすごいですねと褒められた翌日ということもあり、実に誇らしげだった。
お前男友達と風呂入ったことねえの??????これ標準だと思ってんすか???????
しかも笑ってしまうくらい初春。という感じの息子氏。俺は早く帰れるわこれと自信を持ってしまった次第である。

どうぞ。

俺は竿美からもらったハートを消化しないといけないから。どうぞ一人で頑張ってください。
マジにいうが、俺はツムツムでハート三つを消化したあたりで全てを終えたのである。要するに俺のシン◎レラが3回スキルを発動するよりも早く終わったのだ。it's a magical これが魔法使いの魔法か。

「終わりました」
「はーい」

以上である。

もはや何が起きたかわからない。何も思うことはなかった。小説の解像度すら上がることもなく、やつの静かなハンズアップと共に肉体言語は終了したのである。俺ただ風呂入りに来ただけ的な。
しかしアドゥはなんだかキラキラしていた。それはもう実に満足像である。信じられん、犬がぶっとい骨に興奮して遊び倒したあとみたいにはへはへしている。まじお疲れ様でしたって感じ。
滞在時間、脅威の30分である。

その後俺はお別れを言い渡すお話をすべくさよならバイバイ(意訳)という感じで後日電話をしたのだが、それはもう最初から最後まで面倒くさかった。

「えっえっ待って体が目当てだったの!?」

なんでお前がそのセリフ言うんだよ。

「ひどいやきちたん、俺今どこにいると思う!?公園の砂場!!」

どうだっていいわはよ別れてくれ


「うううう、もう別れるって言うんなら、公園の砂食って◉んでやる!!!!」

ボツリヌス菌にやられろゴルァ!!!

あのしおらしいきちたんから鬼畜たんになっていた俺は、最後に一言だけアドバイスをした。

「いいか、付き合ってもない段階から求められてもいない自撮りを毎日送るのも、通勤時間帯の電車でお前の裸の画像を送りつけてくるのも、電話で突然自作の歌を歌い始めるのも、許可なく背後から忍び寄って抱きついてくるのも、俺の方に負担をかけるのも、いざやるってなつりと時に水商売のお姉さんに教えてもらったとか言うそのノンデリも全部気持ち悪いからやめろ。お前の次の彼女が哀れでならない。俺がお前の傷になったのなら一生忘れるなこの忠告を」
「アス」
「あと生え際やばい」
「ゔわあああ!!!」(発狂)

こうして俺は無事に別れることに成功したのだが、その後「きちたんのせいで車ぶつけた」「きちたんのせいで三十万円はらって結婚相談所にいった」「きちたんといっしょに旅行にいきたいです」
「きちたんきちたん!!」とクソやかましかったのでブロック。
竿美に「男遍歴ガ◉バー旅行記すぎるだろ」とわけのわからない褒め方をされた俺がいまの男と出会うのは、これから3ヶ月後のはなしである。

みんな、ノリと勢いで付き合うのはだめだぞ。括らねばならぬ腹はいざという時にとっておきなさい。俺との約束🙋

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