児童文学の面をした珠玉のBLサウナ物語①
俺絶対これタイトルにするつもりやんな、これ一巻の途中までの考察やけん…最後まで読んだ読者様におかれましては、ああだいきち、溢れちゃったんやなとどこぞの親戚のおばちゃんヅラで見守っててください。なお盛大にネタバレを含むので、嫌な人はこの時点で回れ右をしましょう。
「前世のない俺の、一度きりの人生」についての感想だ!
作者ははいじ先生。
どんな作品を作ってるの?と思われる方もいるだろう、クズ攻めが好きで読みはじめた作者様だが、読者の俺が現段階で言える作風を端的にまとめると
カジュアルな筆致から繰り出される健やかな日常は、非常に心穏やかに読める。ただし突如無保険の車が飛び出してきて、読者の情緒にダイレクトアタック。その読み手の情緒の乱高下が、いわゆるサウナで‘’整う”のと同じ。
読者完全自己責任型サウナ系BL小説作者
~上手に墓穴掘れました!~
だってひとりでできるもん!!
である。
なお本作は腐女子が喜ぶ竿で穴を摩擦する描写はなく、どちらかというとドラマ感覚でそれぞれの人が歩み続ける道を見ているような体験型没入小説。イマーシブ◎ォートみてえだなおい。
なおだいきちははいじ先生に読了すらまだできていない現時点での情緒を殺されたので、次ページ手前段階での遺言状だと思ってお読みいただきたい。俺の今の現在位置は1巻の219ページです。
本作の世界観は数あるBL設定の中でもかなり特殊。タイトルからでもわかるように、主人公アウトの世界の中では、前世の記憶を持つのは当たり前と言う思想を、ビヨンド教によって広められている。
前世のないものは体内にマナを持たない人間であり、ビヨンド教によって迫害された過去すらある。前世持ちばかりの世界で、主人公アウトは一人生きづらく日々を送っていた。
しかしこのアウト、実に狡猾で強か。生き汚いというか、まあ地頭がよく回る。
幼い頃、戦争時代を生き抜いた前世を持つ当時三歳の弟のアボードによって、物理的に己の異常さに気付かされたアウトは、一つの手段を駆使して今までを生き抜いてきた。
それは、前世を自分で作ること。
会話の糸口が前世から始まるこの世界で、アウトは自分を守るために作り上げたまやかしの前世を剣にして、戦っていく。
しかし悲壮感は一切なく、趣味は己の夢の達成に向けて、趣味と実益を兼ね備えた酒場巡り。
酒が入れば己のまやかしの前世を語り、他人の反応を見て楽しむ。
お前相当な覚悟で嘘で固めた剣を振り翳してるわけじゃないんかい!と、いい意味で強かに戦うアウトの姿が実に愉快。
主人公は、クラスに一人はいそうな、お調子者だけど周りをよく見ているタイプの男子なのだ。
つまり、悲壮感がない!重い設定ながらに安心して読めるので、どうか肩の力を抜いて衝突に備えてほしい。(不穏発言)
今日も今日とて、舌が滑らかに回ったアウト。しかし、作り込んだまやかしの前世は少しずつ輪郭を帯びていく。
アウトは、見つかってしまったのだ。作り上げた前世を最初から知っている男トウによって。
「やっと見つけた!」と口にしたのは、作り物のアウトの前世の中に幼馴染として存在すると主張するトウ。
彼の中にあると言うアウトの作り話のその後は、前世に夢を乗せて語るアウトにとっては、完全なるイレギュラー。
夢くらい見させてくれよ!といったとして、アカン!と張り手おみまいしてくる男がトウ。(言い方)
下手すれば作り上げてきたものを知らない何者かに奪われる恐怖も背負うわけで、アウトが脱兎の如く逃げ出すのもわかりみが深い。
何より、アウトの前世での最後は、病で死んだと言う設定なのだ。
その理由も、前世からの経験が引き継がれるこの世界で、足りない知識や大人な振る舞いを、
前世のアウトは死んでしまったからもっていない。だから仕方がないんだと言う説得力の一つにしている。
自分でこの設定を決めている時点でアウトは決してバカではないし、今が初めの記憶として生きることを、割り切っているように感じる。
趣味である酒を交えながら、アウトはよく他人の前世について前のめりで聞くのだが。だいきちはそれを、前世を持たない異分子である自分を受け入れつつも、本音は心のどこかで寂しく思っている証である。と思う。
他人の話を聞くのが上手いのは、知らない世界を知りたいというアウトの欲求があるから。
つまりアウトは、自分が作り上げた前世の話の中ですら、世界と自分とを切り離して考えているのだ。
無理ーーーーーー!!!ポジティブに日々を丁寧に過ごしているくせに、無意識下で自分を諦めている、しかもその気持ちを蓋してしまい込んでいる。自分の心の傷すらも気がついてない受けなんて可哀想すぎて一生陽の下で笑っててほしいいいいい!!!!!
というか主人公の何気ない描写でここまで含ませると言う手腕がもう無理すごすぎん。もう始まってるんだよ心は唐突な衝突事故への準備を!!しかも覚悟を持つどころか前半のアウトによる呑気な空気でぬくぬく温められた情緒に向かって、そのうちはいじ先生ののったプリ◎スミサイルが飛んで来るからその辺も含めてどうぞよろしくお願いします。
そして唐突で不本意な出会いによって酒場を逃げるように出たアウトは、とある場所にたどり着く。看板も何もない酒場は、アウトにとって理想の店そのものだった。店主の性格には難があるけども。
アウトの夢の原型である酒場の店主、ウィズとの出会いはいいものではなかったが、二人は次第に互いの時間を共有していくことになる。
特にこの後の展開で目を逸らさずに見てほしいのは、いろんな考え方の人間がいると言うことだ。
はいじ先生の本は総じてキャラクターが人間臭い。それも、ちょっと尋常じゃない言葉の組み合わせで、小説という一種の現実逃避の世界でその才能をまざまざと見せつけてくる。
作中では、ウィズの前世である貴族の少年オブと、貧しいインという少年の、子供同士のやりとりが現世へと交わってくる。
オブはインを見窄らしく、自分とは住む世界が違う子ども。という評価で接している。それはもうハリセンボンかのようなトゲトゲさでインを扱う意地悪なオブなんだが、インはそんなちくちく言葉なんてものともしない。心にATフィールドを展開してるかのごとくグイグイいく。
俺それ知りたいからお前が教えて!!という具合に、興味が止められないインに遠慮なんてないのだ。
ちなみにこんな子ども二人にだいきちが纏わりつかれたらきっとしぬ。「もうやめたげてよぉ!!ひとりにしてぇ!?!?」ってひぃんってなる自信がある。
無知すぎるインに、オブがキレたくなるのは磁石の反発のようなもの、近づけば近づくほど離れてくのに、インのハングリー精神で磁石は性質を変えていく。
その証拠に、大人でも子どもに説明するのが難しい時計の存在意義の説明を、オブはこう伝えるのだ。
「時計は、人と人とがすれ違わないようにするためだ」
こんな説明、大人でもスッと出てこんがな!?時計なんて「迫りくるもの」「もう二度と戻らない証」だの、クソネガティブにいうわ俺ならな!?!?!?
こんな、思いやりで構成されてるオブとかさー!!!!バファリンのジェネリックかよ!?!?こんな、こんなん幼子が言ってきたら、「あ、つ、ウッス」とかいってもうそっと道を譲るよね。
なんならぶっきらぼうなオブの代わりに、その言葉を向けられたウィズの靴を懐で温めてやろうかとすら思った。
そういう、子供ならではの透明なものを見るような視点をはいじ先生は持っている。初代様や勇者ヒスイも表現方法が見事としか言いようがなかったが、こういうセリフ回しも読者を引き込む要素である。
そしてオブによって時計の読み方を教えてもらったインの瞳にはオブしか映らない。わかりますか、すれ違わない為にはまず、何をしますか私達は。まず相手がどこにいるのかを確認しますよね!?あのセリフが見事に二人の芽生えへの説得力に繋がるんです。この展開は、インだけが知ってるオブのいち面にあの時触れたからに違いない。
でもオブの現世であるウィズ
おめ〰️はすこしひねくれ過ぎだなア〰️!?!?!?
はいじ先生からネタバレええよ!?って言われてるから書くけど!!!!!書くけどもう読むの疲れただろ!?!?後半へ続くだわ!!
ただし現在地まだ本作の100ページにも満たない位置時点の感想やけど。
永遠と現在地の変わらない伏見稲荷にいる気分やわこれ〰️!!!