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薬剤師の仕事はAIに置き換わるのか?救急医療の現場から考える

AI技術の進化は、私たちの生活に革新的な変化をもたらしています。今後、その影響力はさらに拡大していくことが予想される一方で、人間の仕事がAIによって代替されるのではないかという懸念も広がっています。

2015年、オックスフォード大学と野村総合研究所の共同研究において、「10〜20年以内に日本の労働人口の49%の仕事がAIによって代替される可能性がある」という衝撃的な予測が発表されました。あれから10年近くが経過し、AI技術の急速な進歩を考えると、その代替率は更に上昇している可能性も考えられます。

では、薬剤師という仕事はどうでしょうか? AIによって不要な職業になってしまうのでしょうか?


確かに、在庫管理など、定型的な業務の一部はAIに置き換わっていく可能性が高いと考えられます。これは医師や看護師など、他の医療職種においても同様の状況です。しかし、私は救急医療の現場で日々患者さんと接する中で、AIでは代替できない薬剤師の役割を強く実感しています。

救急医療の現場では、患者さんが必ずしも明確な回答をしてくれるとは限りません。薬歴を聴取する際も、断片的な情報を結びつけて全体像を把握し、経験や知識に基づいて判断し、治療チームに共有する必要があります。こうした場面では、人間ならではの高度なコミュニケーション能力と判断力が求められます。

現在、私も業務効率化のために生成AIを活用していますが、その回答は一般的な内容に留まることが多く、救急医療特有の複雑な状況に対して、常に適切な解決策を提示できるわけではありません。確かに、30年後の医療技術やAIの進化を正確に予測することは困難です。しかし、患者さんの微妙な表情の変化を読み取り、その背景にある医学的・社会的な文脈を理解し、最適な医療を提供することは、依然として人間にしかできない専門性の高い判断だと確信しています。

特に、救急薬剤師として命の危機に直面している重症患者さんに向き合う際の判断や対応は、単純なアルゴリズムでは代替できない複雑な要素を含んでいます。これからの医療は、AIと人間がそれぞれの強みを活かしながら協調していく時代となると思います。その中で、薬剤師は専門性と人間性を兼ね備えた医療職として、さらに重要な役割を担っていくものと考えています。


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