自然対数の底eについて語らせて ③極限
eってホントにある?
数列でもあらわせる
$${e}$$を次の式で定義しました。
$${e=\lim_{k \to 0} (1+k)^{\frac{1}{k}}}$$
これは$${\frac{1}{k}=t}$$として、
$${e=\lim_{t \to \infty }(1+\frac{1}{t})^t}$$
とも書けます。これは数列の極限としても表せます。すなわち、
$${e=\lim_{n \to \infty }(1+\frac{1}{n})^n}$$
極限に近づいていくぞ
さて、$${e}$$はあるのでしょうか。
ん?どういうことでしょうか。
もう少し詳しくいうと、右の極限はちゃんと収束するでしょうか。この問題を考えていこうとすると、極限の定義に踏み込んでいく必要があります。
高校ではどのように捉えられていたのでしょうか。教科書では極限を「限りなく近づく」とう言葉で説明していました。数学っぽくなく、曖昧な感じです。
ここでは、数列の極限をかっちりとみていきましょう。
数列の極限を定義しよう
$${\lim_{n \to \infty } a_n = \alpha }$$
これを詳しく説明するのがゴールです。
いま、$${\alpha}$$は実数とします($${a_n}$$は収束する)。
まず、数列が収束するのをイメージしてみましょう。
だんだんだんだん$${\alpha}$$に近づいていく様子を想像してみてください。数列の点と収束先の$${\alpha}$$の点との距離がどんどん小さくなっていきますよね。この近づいていく感じを表していきます。まず、$${\alpha}$$からの距離の指標(つまり$${\alpha}$$からどんだけズレているかという誤差として)$${\varepsilon}$$という正の実数を導入します。ある数列の点$${a_n}$$が誤差$${\varepsilon}$$より小さいというのは絶対値を使って、$${|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$というふうに表せます。またここで、誤差$${\varepsilon}$$はとても小さいことを想定してください。このことを念頭におくと近づいていくとは、ある番号(例えば$${n_0}$$)以降すべての点が誤差$${\varepsilon}$$より小さいといえそうです。そんな訳で次のように数列の極限を定義します。
数列が収束するとは、どんなに小さい$${\varepsilon}$$に対しても、ある番号$${n_0}$$が存在して、その番号以降全部で、誤差$${\varepsilon}$$に抑えられてしまう($${|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$)ということです。
まったく同じ内容を数学っぽい言葉で繰り返します。任意の正の実数$${\varepsilon}$$に対して($${\forall \varepsilon >0}$$)、ある自然数$${n_0}$$が存在して($${\exist n_0 \in \mathbb{N}}$$)、$${n_0}$$以上の任意の自然数$${n}$$で($${\forall n \ge n_0}$$)、$${|a_n-\alpha|<\varepsilon}$$が成り立つということが数列の収束の定義です。
はさみうちを"証明"する
ここからはいったん$${e}$$から離れて、さっき定めた定義から高校で習う「はさみうちの原理」を証明してみようと思います。はさみうちとは、すべての$${n}$$で$${b_n \le a_n \le c_n}$$が成り立ち、$${\lim_{n \to \infty} b_n =\lim_{n \to \infty} c_n=\alpha}$$のとき、$${\lim_{n \to \infty} a_n=\alpha}$$となることです。内容自体は結構当たり前で、証明のいらない原理とするのもわかりますが、証明しようとすると次のようにできます。
まず、任意の実数$${\varepsilon >0}$$をとります。$${b_n}$$と$${c_n}$$が収束することから、ある自然数$${n_1 , n_2}$$が存在して
$${|b_n-\alpha|<\varepsilon ~ ~ ~(\forall n \ge n_1)}$$
$${|c_n-\alpha|<\varepsilon ~ ~ ~ (\forall n \ge n_2)}$$
が成立します。ここで、$${n_1}$$と$${n_2}$$のうち、小さいほうを$${n_0}$$とします。
$${n_0 = \min \{ n_1,n_2 \} }$$
すると、$${n \ge n_0}$$では、上の不等式は成り立ちます。このことに注意してください。
このとき、$${n \ge n_0}$$となる自然数$${n}$$に対して、$${|a_n-\alpha|}$$を評価します。
$${-\varepsilon < b_n -\alpha < a_n - \alpha < c_n - \alpha < \varepsilon }$$
つまり、
$${ |a_n -\alpha |< \varepsilon }$$
が成立します。したがって、
$${\lim_{n \to \infty } a_n = \alpha }$$
がしたがいます。
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