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性の越境者マリア残酷物語。(3)女装の親友に欲情する男。
小林俊也は親友である池田裕和の女装趣味を知ってからというもの、度々彼の夢を見るようになった。同性愛というものを嫌悪する彼なのに、何故か女になった池田には誘惑されても不快感がない。むしろ、誘惑されるのを待っている。そして、池田の肩を抱き唇を重ねようとするところで夢は覚めるのだ。この感情は何なのか?
2ヶ月前。池田の部屋で酒を飲んでいると彼がトイレに立った。テーブルの上にはスマホが置いてあったので、それを手に取って覗いてみると、そこには美女の写真があり神秘的な微笑を浮かべている。
スクロールしていくと、その美女は様々な衣装で挑発的なポーズをとっている。特にミニスカートからスラリと伸びた脚線美、ヒップラインに目を奪われる。中にはセクシーな下着姿で男を誘惑する娼婦のような姿まであった。最初はその女は池田の彼女かと思い、羨ましいような悔しいような複雑な気持ちになったが、よく見るとその女は紛れもなく女装した池田裕和であった。
一瞬、池田かよ!?と、男が女になったものだと知ると不快感が込み上げた。
秘密を知られた池田は顔が青ざめ、必死にスマホを取り返そうとしている。小林は他人の秘密を面白がって冷やかすような野暮な男ではない。親友に秘密を知られ泣き顔になっている池田を見ると、不快感ではなく同情に似た気持ちになった。誰にでも一つや二つ、誰にも言えない秘密は抱えているものだ。それが性に関するものなら尚更だろう。あの時、小林は目の前にいる池田は男姿なのに、どういうわけか女と接しているような気持ちになった。
池田との付き合いは高校入学後、同じクラスになると何故か気が合い、大学も同じでもう9年にもなる。思い起こせば、出会った頃から彼はどこか女性的であった。身長こそ小林とそう変わらないが華奢で色白。物静かで物腰も柔らかく女性的なのだ。
それでも彼に女装趣味があるなんて夢にも思わない。小林の知る池田は一緒になってエッチな話しを喜んでいるように見えた。連れションした時も、覗いて見ると痩せた身体に似合わぬ立派なモノがあった。
小林は好きであった女子のことを思い出していた。大学のキャンパスで見かけた女子に一目惚れした小林は、アプローチしようと思うがどうしてもそのチャンスがない。どちらかと云えば活発な彼だったが、女子の前では舞い上がってしまう。それでも勇気を振り絞って告白したのが21の時。
名前を “片野千栄子” といった。
小林は見事にふられた。
「他に好きな人がいるから…」というのがその理由だった。高校時代も告白してふられたことは数回あったが、片野千栄子に対する恋は本物だったのだろう。ショックのあまり4〜5㎏痩せた程だ。
小林が24になるまでずっと彼女も出来ず、童貞のままだったのはあの時のショックが尾を引いていたからかもしれない。
片野千栄子に似ていた…。
小林が池田の女装写真を見た時。
最初、それは (片野千栄子なのか?)と思った程だ。池田とは同じ大学に通っていたので彼も彼女の顔は知っているはずだ。自分に隠れて池田は片野千栄子と付き合っていたのか? 友として大変な裏切り。怒りが込み上げそうになったが、よくよく見ると似てはいるがちょっと違う。それが女装した池田裕和だったなんて…。
小林はあの女になった池田の写真が忘れられない。それは片野千栄子に似ていたこともあるだろう。ミニスカートを穿いた彼女の脚線美とヒップライン。女子高生に扮した制服姿が初々しかった。それに、セクシーなランジェリーに身を包み、ベッドの上から挑発的な視線を投げかけている写真もあった。あの眼差しは魔性の女だ!そんな想像をすると小林は勃起するのであった。
(忘れられない。俺はあの女に、女装した池田に、、恋してしまったのか? とにかく、あれから2ヶ月経ってしまった。この気持ちはどうにもならない。メールでも送ってみよう。俺はあの女に会いたい)
その頃、マリアは自部屋のキッチンで料理を作っていた。料理といっても簡単なパスタとサラダだったが、花柄のワンピースで若妻のような姿でせっせと作っている。
すると、スマホが反応してメール受信の通知に気付いた。(誰だろう?…)
送信者は親友の小林俊也。マリアは彼に女装趣味のことを知られた時の恥ずかしさを思い出した。恐る恐る開いてみた。
『池田、久しぶり。あの時のこと(女装写真)はもう気にしてないよな? ところで、お前は大学時代にいた片野千栄子という女を覚えてるかな? お前の女装写真を見た時、俺は彼女じゃないか?と思うほど似てたんだ。お世辞じゃなく、お前の女装写真きれいだったぞ。片野千栄子のようにな。あれが男だなんて信じられない。そこで、あの時、帰り際に話したこと覚えてるか?
一度、お前の女装した姿を目の前で見てみたい。安心してくれ、俺はホモじゃないから(笑)。都合はどうだ?』(小林俊也)
あんな変態的な趣味を知られて、いくら親友といっても引いてしまうよな? もう二度と連絡はないだろうとマリアは覚悟していたのでちょっぴり安心。そして、あの時の恥ずかしさを思い出すと一人赤面した。
片野千栄子のことは覚えている。話したことはないがとても美しい人だった。
当時、小林が夢中になっていたのも分かるような気がする。あんなきれいな人にアタックすれば撃沈されるに決まっている。あの時の小林の落ち込みようといったら…。
(僕が片野千栄子と似ているだって?)
嬉しいような恥ずかしいような、、、。
“お前の女装写真きれいだったぞ” という文面を何度も読み返すと、又、赤面した。
(小林は僕の女装姿を見てどうしたいのだろうか? 僕を失恋した片野千栄子の代わりにしたいのだろうか? まさか…)
女装写真を見て小林は気持ち悪がっているとばかり思っていたので、マリアはそのメールがとても嬉しい。そして、小林と二人っ切りになって、女装姿を晒したら何が起こるのか? マリアは妙な妄想をして股間が熱くなるのを感じた。
でも、無理だ!無理だ!無理だ!
小林俊也の元にマリアから返信メールが送られてきたのは翌日の朝だった。
『メール受け取りました。片野千栄子さんのようにきれいと言われて嬉しいけど、あんな美しい人と比べるときっと幻滅すると思う。女装した僕を見たいという件だけど見てどうするんだ? 僕と小林は長い付き合いの友。そんな友の前で女装するのは恥ずかしい。僕は男だよ、一体、どんな話しをすればいいのかな? 今のところ無理だ!としか言えない。色々考えてその気になったら女装姿披露するよ。その代わりに2枚、女装写真添付します』(池田裕和)
小林はちょっとがっかりした。
でも、その気になったらという言葉を信じようと思った。添付された女装写真は、ミニスカートでポーズをとったもの。それから清楚なワンピース姿のものだった。
それを見て小林は妙な気持ちになった。
気が付けば、勃起した小林はその写真を見ながらシコシコが始まった。
(俺は男の、、しかも、親友である池田が女に化けた写真を見ながら自慰行為をしているのか? 完全に変態だ…)
小林とマリアは禁断の恋に向かうのか?
つづく。