見出し画像

入浴に5時間 

強迫症(強迫神経症)


強迫症の若い患者さんです。入浴に5時間かかります。
まず、入浴の準備に部屋から立ち上がる足の左右、常に細部、一つ一つに確認しながら入浴へ向かいます。
次にお風呂場までの歩行数確認、ドアノブの回し方、タオルの位置、全てが決まっています。なので時間がかかる。
もの凄い疲弊感があります。数日に1度は疲労で寝込んでしまいます。
とても真面目な方でそれ以外は問題がない、優しく気遣いもあって。
でも発症してから徐々に確認する項目が多くなって学校に行けなくなりました。

皆さんは家の鍵をかけたかな?ガスの元栓を閉めたかな?など気になって家に戻ったことはありませんか?
私は数年に1回はあります。もし、365日、1日に数回もやって仕事に遅刻するような生活に支障が出るようになれば ”病気” になります。100人に2人がかかる病気です。

強迫症は苦しい病気です。自分で自分の行動がおかしいとわかっています。でも不安でしょうがないんです。
汚いんじゃないか、手を何度も洗います。また、患者さんは自転車や車に乗っていると人を轢いたんじゃないかと、不安になって引き返す方も多いです。

強迫症の治療はうつ病の治療薬を使う

治療はSSRIという脳内で不安を和らげるセロトニンを効率よく機能させる薬を投与します。日本ではデプロメール、パキシル、ジェイゾロフトが適応になっています。
私は経験則からデプロメールをよくだします。大抵は良く効きます。

基本的にはうつ病に使用する薬ですが上限の量が違います。
デプロメールはうつ病の上限量の倍の300mgまで、パキシルもうつ病は40mgまでのところが60mgまで、ジェイゾロフトも倍の200mgまで適応になります。

5時間入浴の患者さんはどれも効果がありませんでした。
ですが、最近では行動療法が発展してプログラム治療が確立しつつあり併用してみようと思います。

精神科には何の病気?ほんとにうつ?って思うことがよくありますが、強迫症は特徴的な症状が揃ってくる、スパッと診断できます

脳の中の回路や伝達物質の確実な異常なんだろうという確信があります。原因がもっとはっきりしてくれば、治療も発展する。そんな印象の病気です。
どうか患者さんに光がさしますように。

参考:
強迫症の認知行動マニュアル(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113840.pdf

いいなと思ったら応援しよう!