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【雑感】電車・バスもジェンダー政策


こんにちは!エルザスです。


いつものように新聞記事への雑感なんですが、今日は雑感というよりは違和感を覚えたので、その正体がなんなのかを書きながら考えてみたいと思います。





日経新聞の今日の記事


ほぼ全文を引用します。

国土交通省は2025年度にも性別にかかわらず公共交通を使いやすくする政策作りを進める新部署を設ける。現在は物理的な段差の解消といったバリアフリーの政策を担当する部署はある一方、ジェンダーなどの観点から政策をとりまとめる部署はなかった。

子育て中など大きな荷物を持つ人が公共交通を利用しやすくすることや、夜間でも誰もが安心して公共交通を利用できるような政策を進める。

海外ではスウェーデンの一部の自治体で、夜間に安全に利用できるようバス停以外でも家の近くでバスから降車できる制度を導入した。イタリアの一部自治体では仕事と家庭を両立する16歳以上の女性のためのタクシー割引サービスがある。

運輸業では女性の管理職や役員の比率が低いため、これまでは公共交通にジェンダーの視点が不足しがちだった。

現在、運輸業で女性活躍に関わる施策は業界を管轄する鉄道局や物流・自動車局など各局が担当している。新しい組織では運輸業で女性の管理職比率を高めるような方策も検討する。

日経新聞記事より



な〜んかモヤッとする


いや、バス利用のジェンダーフリー化を進めることにはなんの異存もないんです。
私はジェンダー平等論者を自称しているくらいなので、バリアフリー化を進めるように、そして電車に女性専用車が設けられたように、バスについてもジェンダーフリー化を大いに進めていただきたい。

でも、ジェンダーの観点からの取り組みとして、「子育て中など大きな荷物を持つ人が公共交通を利用しやすくすること」が挙げられているのはどうしてもモヤッとする!

だって、子育て中の人を支援するのにわざわざ「ジェンダー」を絡める必要あります?


ジェンダーフリー政策は、前提として男性が優位な状況があり、それを解消するために女性側に優遇措置を設けてリバランスを図るものです。
でも、子連れの男性がバスに乗った場合と、子連れの女性がバスに乗った場合、前者のほうが優位だとハッキリ言えるのでしょうか?
ベビーカーが場所を取って周囲に申し訳なく思うのは、男女関係ないと思うのですが……
(例えば車内で子どもが騒いだ場合、その子を連れているのが父親なら文句を言わないのに、母親だと「うるさいぞ!」とか言うクズがたまにいるから、現在は男性のほうが優位なのだ、という主張はあり得るかもしれません。ただ、それが事実だとしても、この記事からはそこまでは読み取れません……)


なお、「子連れかどうかは別として、痴漢などの被害を受けるのは圧倒的に女性が多いので、それを防止するために女性を優遇する(例えば、電車の女性専用車を模して、路線バスに女性専用便を設ける)」というような施策ならば、私はなんの違和感も覚えません。それはごくごく適切なジェンダーフリー政策だと思います。

やっぱり、子育て支援にジェンダーを絡めることが、私には違和感があるんです。


こんな反論があるかも?

「良し悪しはともかく、現在の日本社会で子育てを担っているのは主に女性なのだから、子育て中の人を支援するのは主に女性を支援することに等しいんだ」という反論があるかもしれません。

結果的にはそうかもしれません。

しかし、
「男女問わず子育て中の人を支援する施策を打ったところ、結果としてその恩恵を受けたのは主に女性だった」
というのと、
「どうせ子育てしているのは主に女性だから、最初から女性だけを優遇のターゲットにする」
のとでは、政策の発するメッセージが全然違います。

子育て中の男性には恩恵を与えず、子育て中の女性にのみ優遇措置を設ける政策が増えると、
「多くの恩恵を受けられる女性が子育てをする方が合理的だ」
と考える人が増え、育児負担の女性への偏重がかえって加速しかねません。
つまり、ジェンダー平等とは真逆の結果を招きかねないのです。


結論:国交省は悪くない、新聞の書き方が悪い

さて、国土交通省の組織改編を考えるようなエリート官僚なら、私が主張した程度のジェンダー政策の理屈はわかっているはずです。

私が思うに、この記事は国交省の意図を的確に伝えられていません。

そもそもこの記事、全体として漠然とし過ぎています。ソースも不明です。
ホームページを確認しましたが、国交省は先週の金曜日から今日にかけて、バス事業のジェンダー政策に関してなんのプレスリリースも出していません。

ついでに言うと、この記事は文章も日本語としてあまり綺麗じゃないと思います。
例えば私なら、最初の文はこうします。

国土交通省は2025年度にも新部署を設け、性別にかかわらず公共交通を使いやすくする政策作りを進める。


さて、国交省ホームページの中でこの記事に関係がありそうなのが、7/25に開かれた「ジェンダーと交通に関するセミナー」のページです。


ここにはセミナーで登壇者が披露したプレゼンの資料も掲載されています。
そのパワポの資料内で「子育て」と検索しても、ジェンダー政策と絡めた話は一切出てきません

むしろ、国交省のプレゼン資料には、
「男性が子育てに参画しやすくなるための環境整備を行う」
との心強い記述もありました↓


というわけで、今回の結論。

  • 国交省には、バスの利用に関して子育て支援とジェンダー政策を絡めて進めていく意図はない(少なくともプレスリリース等からは確認できない)

  • ジェンダーの観点で「子育て中など大きな荷物を持つ人が公共交通を利用しやすくすること」を挙げたのは、日経新聞記者の暴走(いわゆる「筆が走り過ぎた」結果と思われる)


もちろんこれはあくまで私の個人的な考えです。しかし、少なくとも「この記事は誤解を招きかねない漠然とした内容の記事だった」とは言えるでしょう。


大手メディアの記事も鵜呑みにはできない。
改めてメディアリテラシーの大切さを実感しました。そして正しく書くことの難しさも……



私のこの記事も、色々な誤解を招きかねない不十分なものだと思います。
私の書く能力がそもそも足りない上に、ジェンダー論への考え方は人によってかなり異なり、言葉足らずだと本当に誤解が生まれやすい分野だからです。


なので、もしお気づきの点があればコメントを残してもらえるとありがたいです。
今後の糧とさせていただきます。


ちょっとした雑感のつもりがめちゃくちゃ長いし真面目なトーンになっちゃった!
これだから書くことは難しいんですよね……



ではまた!

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