疾患別 とあるPTの独りごつ#13 リウマチ編
1. 慢性関節リウマチ(RA)とは?
慢性関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis, RA)は、自己免疫疾患の一種で、主に両側性の多発性関節炎を引き起こします。病因は不明ですが、遺伝的な素因と外的な要因(感染症や環境)が複合的に作用して、免疫システムが自身の関節組織を攻撃することが原因と考えられています。30~50代の女性に多く発症し、症状は進行性で、放置すると関節破壊や全身性の障害を引き起こします。
2. 病態と進行段階
RAの進行は、Steinbrockerのステージ分類で評価されます。この分類は、X線所見や関節の破壊状態に基づき、以下の4段階に分類します。
## Steinbrockerのステージ分類
| ステージ | X線所見 | 筋萎縮 | 皮下結節・腱鞘炎 | 関節変形 | 強直 |
|:--------:|:----------------------------------:|:---------------:|:-----------------:|:---------------------------:|:----------------:|
| I | 骨破壊なし、骨粗鬆症あり得る | なし | なし | なし | なし |
| II | 軟骨、軟骨下骨の軽度の破壊あり | 関節周囲 | あってもよい | なし | なし |
| III | 軟骨・骨の破壊、骨粗鬆症あり | 強度の筋萎縮 | あってもよい | 亜脱臼、尺側偏位、過伸展あり | なし |
| IV | 骨性強直が加わる | IIIと同じ | 線維性または骨性強直あり | 強直がみられる | あり |
RAは関節症状以外にも、全身の臓器や組織に影響を及ぼします。
全身症状:微熱、倦怠感、食欲不振
肺症状:間質性肺炎、肺線維症
心症状:心膜炎、心筋炎
腎症状:アミロイドーシス
皮膚症状:リウマトイド結節、皮膚潰瘍2. 主な症状と評価方法
RAの特徴的な症状は、関節のこわばり、腫れ、痛み、熱感です。また、関節の変形や可動域制限もみられます。症状の進行により、次のような変形が起こります:
スワンネック変形:指の関節が逆に曲がる
ボタン穴変形:PIP関節が屈曲、DIP関節が伸展する
母指Z変形:親指の関節がZ字状に変形
評価のポイント
X線所見:骨破壊や関節の進行度を把握するため、Steinbrockerのステージ分類を用います。
血液検査:赤沈値(ESR)、CRP、リウマトイド因子(RF)の上昇が活動性を示します。
RAの活動性指数:朝のこわばり、握力、関節の腫張や痛みを総合的に評価します。
3. リハビリテーションの目的
理学療法の主な目的は以下の3つです:
疼痛の管理:痛みを和らげ、患者のQOL(生活の質)を向上させる
関節の保護と変形の予防:適切な運動とサポートで関節の破壊を防止
日常生活活動(ADL)の維持・向上:自立した生活を支援
4. リハビリテーションの基本プログラム
リハビリの流れは、RAの活動期に応じて変わります。ステージ別のリハビリ内容は以下の通りです。
(1)急性期(Stage I)
安静と疼痛管理が最優先。関節の炎症が強い場合、寒冷療法(アイシングなど)が推奨されます。
関節保護:痛みの出ない範囲での軽い運動。スプリントや装具で関節の安定化を図る。
(2)亜急性期(Stage II)
ROM訓練:可動域(ROM)の維持を目的に、自動運動や他動運動を行います。急激な運動は避け、痛みを感じない範囲で実施。
筋力強化:等尺性収縮運動をメインに行い、筋力低下を防ぎます。抵抗運動は控えめに。
(3)慢性期(Stage III)
ROM訓練の拡大:他動運動やリウマチ体操を取り入れ、関節の可動域を最大限に維持。
積極的な筋力強化:等尺性運動から等張性運動へと進行し、全身の筋力や持久力を向上。
(4)進行期・末期(Stage IV)
機能維持と環境調整:関節が強直し非可逆的な場合、残存機能を最大限に利用し、生活環境を整える。
ADL訓練:自助具の導入や環境整備を行い、生活動作の効率化を図る。
5. リハビリ方法とアプローチ
最新のリハビリテーションでは、従来の手法に加え、以下のような新しいアプローチも取り入れられています。
(1)温熱療法
従来の渦流浴やホットパックに加え、低周波治療やレーザー療法が効果的とされています。これにより、炎症が軽減され、血流が促進されます。
(2)バイオフィードバック療法
筋電計を使用したバイオフィードバックにより、筋肉の使い方や力の入れ方をリアルタイムで確認し、患者自身が適切な力の使い方を学習します。
(3)活動支援ロボット・装具の導入
最新の自助具やロボット技術(例えば、パワーアシストグローブ)を使用することで、関節のサポートや筋力補助を行い、ADLの改善が期待されています。
6. 日常生活指導
エネルギー保存:無理な運動や活動を避け、適度に休息を取り入れる。
関節保護:重い物を持たない、指先だけでなく手のひら全体を使うなど、関節に負担をかけない動作を心がける。
セルフケア:自己管理の重要性を理解し、毎日の関節体操や薬の管理を徹底する。
7. まとめ
慢性関節リウマチの理学療法は、炎症のコントロール、関節保護、ADLの維持が重要です。進行性の疾患であるため、治療は長期的な視点で行い、早期の診断と介入が鍵となります。最新の治療法やリハビリ機器も積極的に活用し、患者のQOL向上に努めましょう。
学生へのアドバイス
RAのリハビリは患者一人ひとりの症状やステージに合わせた柔軟な対応が求められます。基本的な知識に加え、最新の治療法やテクノロジーにも目を向け、患者の生活の質向上を目指したサポートを心がけましょう。