【小説】つれづれ草(5)

「540円です。」
 コンビニレジの女子アルバイターの肩には小さなライオンが乗っていた。雄ライオン。たてがみが空調の風になびく。
「温めますか?」
 パスタサラダは温かい方がおいしいのだろうか。
「いえ・・・、袋お願いします。」
「10番。」
 小銭とスポーツ新聞がカウンターに無造作に置かれた。なびくパスタサラダレジ袋。
「横入はやめてください。」
 そう言いながらも彼女は後ろの棚から煙草をひと箱とり、使われてなかった隣のレジに新聞とともに打ちこんだ。
「次はしませんよ。」
 横入人は、パスタサラダの隣から小銭をひろって移動すると、多種多様な清算方法が散りばめられたディスプレイを操作して現金を流しこんだ。
「ありがと。慣れんわ。」
「ありがとうございました。」
 馴染みの客なのだろうが、淡々とした声色で送り出されていった。
 ほんの少しの間だが、商品とともに捨て置かれたようで、不安を感じながら目の前に戻ってきた彼女に携帯画面を差し出した。画面が読取られ、シャラン、と華やかな音がする。
「レシート要られますか?」
 頷きながら、手をだす。
「ありがとうございました。」
 淡々とした声色なので、やはり馴染みの客ではなかったかもしれない。ライオンは欠伸をしていた。

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