やっちゃば一代記 思い出(6)
大木健二の洋菜ものがたり
貰いそびれた勲章
【アンディーブ】
ベルギーではブリュッセル、ルーベン、メルヘンが夢の三角地帯と呼ばれています。さしずめ日本なら最高級の松茸が採れる京都かな!?
野菜栽培に打ってつけの地方です。ここで栽培されるアンディーブは水洗いしなくても、叩くだけで砂を落とせます。
昭和四十九年十月、十ケース(四十五キロ)を初めて日本に持ち込みました。最初は売れなくて、売れなくて、店の片隅で品傷みしたアンディーブを選り分ける日々が続きました。それでもだんだんとい人気がでて、輸入量は増加。お陰でベルギーの輸出業者の金回りもよくなり、私が二度目に現地を訪問した時には、三百坪の豪邸を構え、高級車のオースチンを乗り回すほどのリッチマンになっていました。しかも彼はベルギー政府から勲章をもらい、生鮮食品輸出協会会長という地位まで上がり詰めたのです。
この国ではアンディーブはの本のコメに当たる重要作物。国の産業振興に貢献したという事で、私にも勲章をくれると伝えてきましたが、もう渡航するつもりもなかったので、貰いそびれてしまいました。せっかくのチャンスを逃してしまいました、いまではとても残念です。
一方、国内市場でいまだに記憶に焼き付いているのが呼称論争です。
昭和五十七年五月二十七日、〖将来混乱が予想される野菜の名称統一会議〗が農林省の三番町庁舎で開かれ、わたしら業者は【アンディーブ】、役所は【チコリ】を主張して、互いに譲らず今に至っています。
世界共通では【チコリ】、【アンディーブ】はヨーロッパだけの呼称ですが、食文化を背負った名前にこだわることは大切だと思います。