やっちゃば一代記 思い出(16)
大木健二の洋菜ものがたり
ムスクラン
水耕栽培で活路が
いわば七草の西洋版です。
スカロール、レタス、トレビッツ、タンポポ、エンダイブ、ルッコラ、セルフィーユまたはマーシュを加えたサラダ用野菜の総称を指します。
イタリアでは北部のリグリア地方で1860年代に栽培されて以来のものですが
【ミステカンツァ】の愛称で大衆化しました。一方、フランスでは高級野菜として広まり、1981年2月ニースの野菜管理局が〔ムスクラン〕の呼称を正式に認証、市民権を与えたのです。国境ひとつで、野菜の立場もずいぶん違います。
初めての国内栽培は、1984年の長野県の浅間農協です。しかし、露地栽培では発芽率(蒔いた種から芽が出る率)が七割から上にいきませんでした。
その後、水耕栽培に切り替え、ようやく九割を超える水準にこぎつけましたまた、国産の弱点は赤みが不足していることでした。この色を付けようと、ビーツ、紫甘藍、紅立ての種を加えてみたのですが、成長率が違うので草丈がちぐはぐになってしまいます。同じ科でないとなかなか揃わないのです。
さらに数年の試行錯誤を経て、結局、赤みの強いトレビッツの種を多くして何とか改善できましたが、私としてはまだまだ不満でした。
当時、生産してくれたのは千葉県旭市の一農家だけで、当時は私の専売でした。決して人気のある野菜とは言えませんが、大人っぽい味を持っているだけに、もっと食べられても良かった野菜のひとつだと思っています。
※ムスクラン
日本の水耕栽培では七種類も種を、一定のスポンジ床に混合播種して生育さてていますが、イタリアの土耕栽培はそれぞれを単独で生育させ、市場の仲卸(問屋)がこれをひとまとめにしているのが普通です。現在ではベビーリーフが人気で、沢山の種類を混ぜ合わせたMIXベビーリーフが量販店でも販売されていますね、ムスクランは当時の最先端のサラダ野菜でした。