やっちゃば一代記 実録(37)大木健二伝
やっちゃばの風雲児 大木健二の伝記
敗戦後の日本
敗戦と戦勝国の占領で日本の社会と生活はガラリと変わった。主権在民となった国民は天皇中心の国家主義をあっさり捨て、欧米の合理主義を掲げて経済主導の個人主義へと傾斜していった。が、そんな風潮に馴染めない者も少なからずいた。戦前、洋食レストランを手広く経営していた【宝亭】は、時代の波に流されまいと、戦後も戦前の様式のままで営業を堅持しようとした、だが、進駐軍に店舗を接収されるや無惨にも米兵に店内の座敷を土足で蹂躙されて以来、店主はすっかりやる気を失い、暖簾を下ろしてしまったのだ。戦前、大木が野菜を納めていた、こうしたレストランの多くは社会の変化のテンポついていけなかった。
得意先が消えていった戦後数年というもの、大木は軍納に活路を見出してきたが、それも昭和二十六年の[サンフランシスコ講和条約]以降、米軍の撤収が始まると次第に陰りを見せてきた。