「終わりと始まり」
不思議なもので
こんなに夏の最中を生きているのに
夏の半分を過ぎたあたりから
秋の入り口に焦点を合わせ始めている自分に気が付いた
それでも
クローゼットの真ん中は
まだ夏のお洋服たちでひしめいている
夏服の生地からは
気温で蒸発し
潤いを失ってしまったような渇きを感じたり
日に当たって色が褪せた部分の境目が
見て取れるほどになってきていたりするけれど
それは、味が出てきた証拠だとわたしは思っている
もうしばらく夏との付き合いは続いてゆくというのに
夏のせいにして半ば意地のようになって、洗濯物を回していた付けが回ってきたのだろう
生地はこころなしか、半分泣いているようにみえた
せめてもの想いで
変なかたちで乾いた夏服のしわを、丁寧に慎重に伸ばしていくと
干からびるくらいによく乾いたTシャツは
そのしわに気付かないほどに愛用していたことを
伝わってくるしわの硬さから、実感することとなった
少しくたっとして
自分のかたちになっていくお洋服たちは
思いのほかとても愛おしい存在になる
夏と秋を行き来しながら
それでも、こころは秋のオシャレを妄想することを楽しんでいた
「今年はシャツにお気に入りのニットカーディガンを羽織ろう♪」
その頃はきっと
秋の夕暮れ、センチメンタルな時間帯に
セピアの景色に包まれて秋風を感じているはずだ
ふと見下ろせば
真っ白いはずのシャツも、夕日でオレンジ色に染まっていたりもするのだろう・・・
夏は
気付かぬうちに駆け足で通り過ぎていくけれど
今年はちょっとだけ夏の滞在を長引かせたい自分がいる
少し先の
”秋” を迎える準備期間が延長されることで
その分、秋のおしゃれへの気持ちの盛り上がりを長く楽しむことができるからだ
そんなことを言ってはみたものの
Tシャツからシャツに着替えるタイミングは
案外あっという間に訪れてしまうものかもしれない・・・
それでも
残りのわずかになった夏のあいだは
自分の身体にしっくりきはじめたTシャツの
着心地の良さが忘れられず
きっと愛用し続けてしまうのだろう