「夏の雪原」
日本中、
8月に雪が降る地域はどこを探しても見つからないと思うけれど
この季節に出会った「ライ」は雪のように繊細で
その白さから目に浮かんだのは
両手いっぱいに広がる雪原の風景
まるで8月に現れた雪の原っぱのようだった
白だけでも600色存在すると聞いたことがあるけれど
雪に隠れた、真っ白いうさぎを
そこから見つけ出すことは
やはり難しいことなのだろうと
膨大な白の数からも容易に想像することができた
そして
600色もある中から
「ライ」の色を見つけ出すことも、同じように難しそうで
想像を超える未知の領域に
わたしは目を白黒させるだけで精いっぱいだった
けれど、一つ言えることは
「ライ」の色は
夏の白とうたわれるたぐいの”白”とは
少し違うということだ
例えれば
窓からこぼれる部屋の明かりが
白い生地のうえに落とした
“ ろうそくの影の色 “
とでも表したくなるような
温度を感じる温もりが
そこにはあって
それは、夏のはじけた感じとは真逆の色だと言える
こっくりとした生地の陰影には
夏にみる
日陰と日向のようなくっきりとした境目はなく
みる人にも
手に取る人にも
暖炉のそばにいるような
ぬくもりがじんわりと伝わっているように感じた
「ライ」を通してみた幻の夏の雪原は
今はまだ涼しそうな印象でそこにあるけれど
秋が深まってくるころには
きっと肌で感じる暖炉のほのおのあるシチュエーションが
待っていることだろう
その季節が待ち遠しくて
「ライ」に重ねたニットがかかるハンガーを
わたしはなかなかしまうことができず
いつまでもいつまでも
その先にある雪原の風景から
目をそらすことができなかった