風と会話する
どこに行っても
上がり続ける気温の高さに
うんざりする日々
こどもの頃に駆け回った季節とは
180℃違う今を生きているんだと、
半ば諦めに似た心境にさえなってきてしまう
夕暮れ時は
きまって傾いた西日を背に帰宅していた頃が
別の世界の事のよう思えるほどだ
夕方に風が吹かなくなった・・・
そんなちょっぴり、寂しい現実を受け入れながらも
だからこそ
わたしはウエィヴィシャツに袖を通す
何度目かのある日
ウェイヴィシャツを着ると
なぜか体の周りで風がはしゃいでいることに気が付いた
袖から
裾から
じゃれるように
わたしの周りで風が遊んでいる
いたずらっ子のように
ふわりと裾をめくりあげるたび
あわてて裾を押さえるわたしを
どこか面白がっているようにも見える風たち
どこからか舞ってきて
いつのまにか消え去ってしまう風だけれど
気が付けば
すぅーっと汗が引いて
心地よい余韻だけが残っている
自然とあそんで育ったわたしには
その優しいたわむれが嬉しくって
あれから何度もウェイヴィシャツを着るようになった
風とたわむれることができる唯一の時間に
いつものように耳を澄ませていると
風が遊ぶ声が聞こえるようだった
しばらくすると
まるで小さな鈴のねのように
涼やかな音で耳に心地良く鳴り響いた