甘夏の香りだけが漂うのかもしれないけれど
手に取る本には心を助ける言葉が載っている。それは私の中からは生まれでなかったけれど欲しかった言葉だ。ビタミンCが体内では作られないみたいに。
色んな栄養を求めているうちに、たくさん摂取したきらきらがいつしか自分の言葉を生み出している。生成された言葉はどんな栄養よりも吸収が良くて私はそれを大切にする。愛かなあと思う。
食べやすい本、食べにくい本、食べにくくても面白いから粘って読んだ本。言葉の調理法は人それぞれ違い面白い。食べやすかったのに体に異物が残ってしまう事もある。その料理を最後まで残さずに食べなければ味わえなかった感情だった。放り出した本、買っただけの本。何度も通って噛み締めた味。私の足だけでは辿り着けない色んな味を本をめくって食べて体験して充実する。私好みの胃に優しい消化吸収の早いそんな物語‥たくさん読んでたくさん作って、味見して、自分の舌だけに頼らずに、だけど自由に‥
書き続ける。誰のどんな文章にも、その人の目と心と通して感じ得た味わいがあって多分見本を真似したってはみ出てきちゃう。あなたのおにぎりがあなただけの味わいだったり、あなたの淹れてくれたカモミールティーの温度があなたから手渡された気持ちで落ち着かせてくれたり。触る、匂いをかぐ、確かめる。本の中に手を入れて、行間の中に手を差し込んで、紙の匂い、ベンチに腰掛けている時の風、だいぶ昔に死んだ人がどこかで書いていた現実世界を味わう。味わえる。
今日も今もどこかで自分の心に手のひらを乗せて言葉の音を聞いてる人がいる。