強烈な暴風に‥行列の出来るリモコンとってよ
私は心にリモコンを持っている。
枕元にテレビ台の前にキッチンのテーブルにたまに布団の隙間に落ち込んで。
とにかくすぐに届く場所にこのリモコンを置いておけばいい。柔らかいゴム製のボタンをきゅっと沈ませるとチャンネルが変わる。とても便利だ。
無意識でも無自覚でも惰性で手が伸びて目が覚めない朝に何でもいいからボタンを押す。
このリモコン便利が故に人気がある。
私の部屋の、私のリモコンなのに部屋に入った人間はずけずけと操作したがる。手のひらの脂を残すのは元カレだろうか。行列とまではいかないけど人の心を我が物にしたいひとって意外と周りに沢山いる。
私は心の大きいふりをして泥棒みたいな善人気取りを咎めずに目の端に留めておく。自分一人のものにしておくと結局は使い方に広がりが生まれない。他人は私の引き出しを新しく作ってしまう。
いろいろ苦手なものが多い私、熱い紅茶に口をつけて惰性であなたのチャンネルを見つめた。
あなたはやっぱり私と違って感じているものが多かった。いくらでもモテたでしょう。なのに私と目が合った。
チャンネルが増えすぎたリモコンを少しの間引き出しに閉まっておいた。
ほらきょろきょろと不安そうに探している。
結局リモコンが無くて不安になって、イライラするのはあなたが私を見ていない証拠だ。
こんなもので試したりして悪かったわ。
冷えた両手で彼の頬を包むと針で静止させられた標本みたいに。
《天の声》来週の木曜10時は♡二人は恋の入り口にも立っていない♡見逃せない♡
♡