かんりゃく!!!デジタルバレンタイン
SNSのページを開く。ギフトを選ぶ。
お手頃、人気を二周眺めて決定。
メッセージを選ぶ。可愛い絵をつける。決定。終わり。
私のバレンタインギフトメッセージ付きはWi-Fi飛んでんな、の手をすり抜け、北風小僧の勘太郎と一緒にどこかの電波に飛んでった。
飛んで飛んで(見えないし多分)どうやらちゃんと彼のスマホに漂着した。
既読。めっちゃ嬉しい。ありがとう!
一瞬顔が熱くなり、私のことを好きな例の女友達しか気づかない程度に赤かっただろう。
住所を知らない。会う方法も思いつかない。それだけ遠いことはわかっている。
郵便屋さんは必要ない。住所間違いで返送されない。赤が好きなお笑い芸人の手にぱしんされて床に落ちない。
安全にかけらのトラブルもなくそのプレゼントは無事配達を終えた。
私宛に無料で同じ商品が届いた。私はQRコードを持ってお店に行くとその少し高いチョコを引き換えてお家で食べることにした。誰もいない時間にひとりで。良い商品だった。そんな変なサービスがついていなければ。交換しなければよかったかも知れないが、味を確かめてみたい気もした。
これほど味のしないチョコは初めて食べた。
大きな窓から向かいのマンションの灯りを見下ろす。風が強いらしく電線が上下していた。
夜の闇に少しだけ光るチョコレート。多分本来の色は黒い。窓を開けて同じ様な色の空に放るとすぅーと消えた。
この世界にはもう無駄が存在しない。捨てるという意思を空間が読み取り消し去る。どこかの宇宙人が拾って食べる想像をした。
私みたいにならないでねと消えたチョコに話しかける。
窓を閉め夜を背負う。宇宙に置き去りにされた今日の私にカカオの後味がゆっくりと戻ってきた。