おじいちゃんと孫(夜逃げ風 大作戦)
義実家はいつも騒がしかった。
正月、それぞれの誕生日、父の日、母の日、ゴールデンウィーク、お盆休み、クリスマス。毎月何かしらのお祝い事があって、全員揃って食事会。お盆休みには10人前後で親戚が泊まりに来る。
それに加えて、田舎だから子供会があって、数ヶ月に1回行事があり、町内のお祭りも強制参加。
何にしてもお金が掛かったて、手間も時間も削られた。
子供達にとっては、楽しい行事。
大人にとっては、土日も連休もないような生活。
それに加えて、義姉の兄弟がほとんど家にいて、我が子達と騒いで遊んでいる。
そして、必ずと言っていいほど、義姉兄弟が取っ組み合いの喧嘩をしたり、問題を起こす。
すると、義父は怒るのだが、私達が文句を言うと「母親が頑張って働いていて、寂しい思いをしてるんだから、可愛そうだろう。」と、口出しを嫌がるのだ。
そして、息子が中学に入る頃、事件は起きる。
義姉が子供と家に居るのだが、帰る気配がないのだ。
私は聞き耳をたてるしか無かった。
離婚する。調停をするから、家には帰らない。
は?何で突然そんな事に?しかも、私達には説明は一切無かった。
こちらから急かして、改めて話を聞いた。
すると義姉は「私が困ってるって言ってるのに、助けてくれないの?」と、詰め寄る。
話を聞いていても、夫婦の問題でどっちもどっち。しかも、調停を突然突きつける意味が分からなかった。
義父母もなだめる所か、向こうの旦那が悪いという一方的な話と、私達が受け入れない事に怒り出した。
話が通じない…。
このままでは、我が家にも悪い影響が出る。
家を出る決心をした。
中古住宅を片っ端から内覧。
何とか1か月程度で隣町に手頃な物件を見つけて即決断。
私は父に協力をお願いをした。
なぜなら、出ていく事を言わず、強行手段として夜逃げ同然で出ていく事にしたからだ。
義姉がそうしたように、突然に出ていくという現実を突き付けてやる事にしたのだ。
事前に、目を盗んで荷物を移動しておいて、当日、数人の手を借りて出ていく。
しかし、出ていく前にきちんと説明をする場に父に出てもらった。
怒り散らす義父母。
何故か私に謝罪を求めた。
面倒だから、謝罪と土下座。私は早く出ていきたかったから、何とも思ってない。
そして、2時間程度で荷物を綺麗に運び出し、引っ越し終了。
父とはいずれ介護も考えて一緒に住もうと言ってあった。
古いアパートに住んでいたから、行く場所が出来たと喜んでくれた。
引っ越しが終わって家の中を片付けていると、父と息子がなにやら楽しそうに話をしていて、どこかに出掛けて行った。
近くのホームセンターでベッドを買ってきたのだ。
息子にとっては始めての自分の部屋。
疲れてるはずなのに、父は嬉しそうに息子と一緒にベッドを組み立て始めた。
我が家と父は、大きな困難を一緒に乗り越えた仲間みたいな感じになっていた。
「どうせお前達はこっちの支援がなければ、すぐに自己破産だな!」
義父の最後の捨て台詞はこれだった。
これは息子も聞いていて、後に「あいつは大嫌い!あの場所で、俺が文句言おうかと思ったんだよ!許せないよ。こっちのじいちゃんとは大違いだよ。」
色々悩んでいたのは私だけでは無かった。
息子にも苦痛を与えてしまっていたのだと思った時、出て正解だと思ったし、見返してやろうとも思った。