おじいちゃんと孫(生き生きとした顔)
1日目は家に戻ってきて終わった。
とにかく無事に家に到着して、一晩何も無かった事に安心しつつも、1週間の予定はきっちり決めていた。
2日目は仕事場に行く事。
本当はちゃんと食べる物も全部作りたかったが、時間がとにかくなくて、朝は菓子パンとなってしまった。
「久しぶりの熱いコーヒーだ。」
1度家に帰り、訪問看護の人が来る時間まで自分の身支度をして戻る。
すると、父はただ嬉しそうにコーヒーメーカーを洗って、コーヒーメーカーのスイッチを入れたのだった。
しばらくして、訪問看護の人がやってきて、私がやる予定だった背中の管の消毒とガーゼの交換と固定をしてくれた。
それから、管から出ている廃液の確認と処分。
もちろん、体温や血圧、全体的なチェックもしてくれる。
入院先の看護師かんから、きちんと引き継ぎがされている事が分かって安心した。
1日おきに外来に行く約束にはなっていて、外来の無い日に来てくれる事になってあった。
「大丈夫そうだね。今日は?お仕事見てくるの?気を付けてね。」
そう言って、「また明後日来ますね。」と言って帰って行った。
「じゃ着替えてて。ゆっくね。私、お昼買ってくるから。」
今日は1日仕事場に居たいと言われていたから、父が納豆巻きと味噌汁が良いと言うので急いで買いに行った。
歩くのに危ない可能性を考えて、杖も用意しておいた。
私は昼のうちに、晩ご飯の買い物や父の家の掃除、洗濯をする予定で、会社の人に任せて帰る予定だったからだ。
久しぶりにシャツを着てスラックスを履き、ジャケットを羽織った。
ゆっくり。ゆっくり。
予定より遅くなったが、工場に到着すると、たくさんの人達が出迎えてくれた。
足元はおぼつかず、声も細々としていた父が一変して笑顔になった。
「じゃ、5時に迎えに来るから。何かあったらすぐ連絡してね。」
そう言って、その場を去った。
少しの時間も無駄には出来なかった。今日は、父と夕飯を家族で食べて、シャワー予定に入っていた。
昨日動かした家具の隙間のホコリも掃除しなくちゃいけない。
そして自分が体調を崩したら何も出来なくなってしまう。そう思って、しっかり昼ご飯も食べた。
あっという間に時間が来て、父を迎えに行った。
すると、事務所に居ない。
声のする方へ行くと、現場で仕事のやり方を後任の男性に教えている。
あれ?
すぐに変化に気が付いた。
背筋がシャキッと伸びて、声も張りが出ていた。
明らかに雰囲気が入院以前の父に近付いていた。
目の輝きが違う。1日居ただけで、顔つきも変わった。生き生きとしていた。
「また来るからよろしくな!」
そう言ってその日は終了。
そして、久しぶりに私の家族と夕食を食べた。
余程嬉しかったのか、息子とも話がはずんだ。
落ち着いてからシャワーを浴びる時は、息子の手を借りた。娘とは言え、あまり見られたくないと思ったからだ。
そして、その日は息子に家まで送ってもらう事にした。あえて2人にしたかった。5分程度の時間だが2人で話をしたいかもしれないと思ったからだ。
「じいちゃんのあの管は何なの?液体は何で出てるの?」
息子は帰ってくるなり、私に聞いてきた。
簡単に説明して、「ちょっとグロいな。」と言う。
むしろ私は、痩せ細ったじいちゃんを見て悲しむかと思っていたが、
「痩せてても、話せばちゃんとじいちゃんだから。」
そう言って、笑っていた。
まだ2日目。今日から私は自分の家で待機。
無理にでも眠って、体力の回復。と思いながらも、枕元にあるスマホが気になった。