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おじいちゃんと孫(孫娘とギター)

一時退院5日目(金曜日)は、2日に1度の通院の日。

病院に行っても、診察までに時間が掛かるから遅めに行きたいと言い出した父。

「居られるだけ仕事場にいたいんだ。」

そう言うので、朝一から仕事場で過ごす事にした。

2時間か3時間。

足取りもしっかりしてきて、このまま退院出来るんじゃないかと思う程だった。

私はまた買い物をしたり、雑用を済ませてから合流する事にした。

直属で働いていた2人が、最後は手を振って見送りしてくれた。
…きっとまた来れるよ。
そう思いながら、車を走らせる。

前回程混んでは居なかったせいか、早めに終わった。
担当医は相変わらず険しい表情をするが、看護師さんは事情を知っていて、「買い物行けたの?」「誕生日は日曜日なんだっけ?」「お孫さんと話できた?」
なんて、色々な話を聞いてくる。

「何だか顔色も良いみたいね。」

ある看護師さんが声を掛けてくる。
父も楽しそうに、あれこれ話をしていて、管が無ければ病人には見えないと思えた。

そしてまた帰る。
昨日の謎の女性登場話から、その人の話を聞いたり、叔母達と会えて良かった。そんな話をしていた。

今日は我が家で夕飯を食べてシャワーを浴びる。時間的な余裕があった。

我が家でくつろぎながら、娘にギターを教えてくれていた。
古いクラッシックギターを父は持っていて、それに興味を持った娘が、古いギターを時々弾いていた。

それを見て、数カ月前、中古のギターを買って来てくれたのだ。

2人並んで、コードの練習をしたりしていた。

「簡単な曲でコード覚えるほうが良いんじゃない?」

そう言って、私が【薔薇が咲いた】という曲を選んで2人に薦めてみた。

最初は2人で練習して、父が入院すると娘は1人でたまに練習していた。

ご飯の用意をしていると、2人で奏で歌う【薔薇が咲いた】が聞こえてくる。

父はほとんど手に力が入らず、娘の手元を見て歌うだけだった。

薔薇が咲いた
薔薇が咲いた
真っ赤な薔薇が
寂しかった僕の庭に
薔薇が咲いた

ゆっくりと、コードの手元を確認しながら丁寧に。
弾き終わって、2人で拍手をする。

とても優しくて、温かい時間が流れていた。


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