「診療所ソーシャルワーカーによる予防的支援を構成する要素とその関連性に関する研究」榊原次郎(2024)
副題:疾病早期または安定期の患者支援過程とその環境に着眼した支援のあり方 『保健医療社会福祉研究』Vol.32 2024.3
(概要)
診療所を所属機関とするソーシャルワーカーの活動に着目し、その実践活動について予防的支援があることを検証している。
(引用)
・本研究で用いられるSWの予防的支援は、「疾病を有する状態の疾病早期または安定期患者を対象とし、疾病や疾病に付随する患者の生活課題発生と未然に防ぐ、もしくは早期発見・対応により悪化を防ぎ、生活安定を図ることを目的としたSWの統合的・連続的な活動実践」と定義する。
・SWによる予防的支援を構成する要素は、【状況悪化の恐れや懸念からの気づき】、【病状や生活課題進行の予測と共有】、【支援受入の躊躇や拒否への対応】、【現状と未来の両側面からの課題軽減や悪化防止】、【診療所内で予防的支援体制の構築】、【地域内多機関との連携基盤形成】の6つのカテゴリーで構成されていた。
(つぶやき)
私が20年ほど前に書いた論文を、引用文献として活用してくださっている。当時、指導をしてくれていた先生から、「今すぐに理解してもらうことはできない。20年先、30年先に取り上げられれば、今やっていることは間違いではない」と言われていた。それを思い出し、とても嬉しく思っている。
当時は診療所に所属するSWは職能団体からも「???」の眼差しで見られ、地域の勉強会に参加しても、しっくりとこなかった。しかしここ5年ほどで、診療所に所属するSWの存在は「まあまあ普通にいる」ものとしてとらえられ、そして専門性を深めようとする動きが活発になっている印象を受ける。
本論文は、診療所のSWの社会的意義を「予防的支援」という側面から評価していく…この姿勢がベースにあるのだと思う。しかしながら、何か物足りなさを感じた。先行研究で掘り下げられている実践内容と本論文で紹介されている実践内容に大差はない。そこになぜあえて、「予防的支援」という枠組みで整理をしようとしたのか…。
ぜひ、もがきながら、診療所SWの活動をいろいろな角度で検証し、社会に向けて報告し続けて欲しいと思う。