
【T&T】…《サルクティの魔除け》2nd~復活のスグゼルバ~
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トンネルズ&トロールズはフライング・バッファロー社の登録商標です。
※この作品は、「安田均・他/グループSNE」及び「ケン・セント・アンドレ」及びフライング・バッファロー社が 権利を有する『トンネルズ&トロールズ 完全版』の二次創作物です。
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社会思想社より発行されていた、トンネルズ&トロールズソロアドベンチャー、「恐怖の街」収録作品、《サルクティの魔除け》。
今回、リプレイパートと物語パートに分けて書いてみました。
少しでもT&Tの雰囲気と、恵那ケミカルワールドを楽しんでもらえたなら幸いです。
※
【リプレイパート】
一度は恵那ケミカルファミリーの冒険者領主、「チギー・G・モラン」が復活前に倒しております。
しかしそれから4年後、なんと魔王は時間の管理者であるクロノスの1人を殺し、その力を持って時を遡り、再びフリーゴアの街に降臨したのです。
魔王スグゼルバと因縁深き、いにしえの女神マーデリンは、自らの使徒…クルセイダー…となった恵那ケミカルファミリーの冒険者、《”トロールみてえな”練太郎(子)》にスグゼルバの復活を知らせ、サルクティの魔除けを手に入れて今度こそ、完全にこの世界から消滅させる封印を行うよう、勅令を下します。
もう1人のクルセイダー、カンキン・バターチャーンや冒険者領主チギーたちは、別の重要な任務や冒険のため、彼女への合流は間に合いませんでした。
代わりに《レッド・サークル》を追う事件で練太郎(子)が助け出した奴隷の1人、女盗賊にして義賊のミーナが、練太郎(子)のサポートに入ります。
果たして、完全復活の野望と英雄たちに幾度となく邪魔をされた深い憎しみと怒りに燃えるスグゼルバ軍が、フリーゴアとその周辺諸国を破壊し尽くす前に、
秘宝サルクティの魔除けを入手して、かの魔王を止めることができるでしょうか。
その重大な使命が、クルセイダーに託されました。
※
サルクティの魔除けを巡る冒険…
始まりの「死の洞窟」を抜けて、練太郎(子)たちは海へと出ます。

そして周辺各国を巡り、魔王スグゼルバの手先や恐るべき災害を退け、そして敵の本拠地でら恐るべきガーディアン・デーモンとの交戦でミーナが生死不明となる中、練太郎(子)は魔除けを守る遠い遠い島へと転送され、最終試練を乗り越えてついに”サルクティの魔除け”を手に入れます。
そして、始まりの街フリーゴアで、この街に転送されて帰還できる転移魔法、「クレヴン」を発動、練太郎(子)は街の中に無事に戻ります。
しかしそこには、あちこちに火の手があがり、土と木と肉の焼けたにおいが漂い、生暖かい風の吹く、広大な島の半分以上を魔王軍に破壊・蹂躙されて、破滅の運命がすぐそこまで迫ったフリーゴアの姿でした。

しかし、練太郎(子)の帰還を確認してやってきた街の統治者と、評議会議員たちの中に、なんとミーナを見つけます。
ミーナもまた、転移魔法を知っていたため、練太郎(子)と離れた後にもなんとかフリーゴアへと帰還することができていました。
そして、フリーゴアの統治者は言います。
「サルクティの魔除けには、さらなる力がある事が判明した。
その所有者が最も強く思う、最も強き者を、魔除けの強制力でもってこの場に召喚することができる。
それは人間でもドラゴンでも呼べるそうだ。君の命令には逆らえない。だが、相手も君のことを知っていなければならない。
縁のないもの、薄いものを召喚する事はできないそうだ。」
「……それは、例えば神や神のごとき力を持つものでも大丈夫なのかな?」
「いや、それは何とも…
ただ、所有者が心から力を認める者に限られるという。神を呼べるかどうかは私にはわからないし、まったく検討もつかない…」
一同が必死に抵抗や対策案を議論する間にも、恐るべき死の軍団は休むことなく、フリーゴアへと歩みを進めていた。
そして死と破壊、混沌と蹂躙の化け物たちが、今や街を食らいつくさんと防衛線を囲み、決戦は間近に迫っていた。
※
【物語パート】
練太郎(子)は意を決し、かつて「魔術師の島」の最終決戦で、練太郎(子)が女神マーデリンの加護を受けて《クルセイダー》となった戦いを思い出した。
大魔法使いダークスモークの作り出した異界に干渉し、降臨した恐るべき暗黒の化身、
《鉄のカンタフの暗黒卿 バラハ》。
紙一重の戦いで、幸運も重なり、練太郎(子)たちはバラハに勝利する。
しかしそのバラハも、複数ある化身の一つに過ぎず、桁違いの戦闘力と死と破滅をいとも簡単に操る死神に、勝利したとはいえ練太郎(子)たちは数ヶ月は震えが止まらなかった。
しかし今回、あまりにも強大な敵…魔王スグゼルバの大軍勢に囲まれた光景を前に、練太郎(子)はかの暗黒卿へ思いを馳せた。
(もし、もしも。バラハを召喚出来たら。
魔王には魔王だ。俺は彼を…呼んでみたい。)
練太郎(子)はエメラルド色のサルクティの魔除けを胸元から取り出し、天にかざした。
そして祈りを込め……魔除けに語りかける。
(スグゼルバからこの街を…島々を…
世界を守ってくれ、魔除けよ。
皆が元気に笑える、楽しい平和な時間を、取り戻してくれ。
いや、俺たちに取り戻させてくれ!
サルクティーーーーーーーー!!!)
所有者練太郎(子)の祈りを受けて、サルクティの魔除けが輝いた。
そして曇天が割れて、スグゼルバの大軍勢の上空に五色の光が出現しオーロラのようにたなびいた。
そして次の瞬間、五色のオーロラが地上に矢のように降り注ぐ!!
それはスグゼルバの魔王軍に直撃し、一斉に大爆発を引き起こす。
数万はいたであろう、その混沌と虚無の軍勢は、あまりにも強力なサルクティの魔除けの力で消滅してゆく。
「す、すげえ……!」
「き、奇跡だ…奇跡が起きた!!!」
「これは…俺たちは…フリーゴアは……勝った!!」
うおおおおと、守備隊や自警団の人々の大歓声が上がる。
「やりましたな、練太郎殿。ふたたびかの魔王は、今度こそ完全に封印された!」
フリーゴアの統率者は練太郎(子)の肩を叩きながら涙を流しそう言った。
(……本当にこれで勝ったのか。何か、何か嫌な予感がする……。)
練太郎(子)とミーナは鮮やかな光たちが地上の悪鬼を駆逐しているさまを静かに見つめていた。
その時だ。五色の光の遙か向こうで、黄土色の柱がドロリと天に向かって吹き出した。
それはまるで、火山の噴火のように天高く不気味な土石流のようなものを吹き出している。
「…あれはなんだ?!」
「何か、飛んでくるぞ!!?」
土石流は上空からまるで戦争で使う投石器の岩のように、放物線を描きながらフリーゴアの街を襲った。
そして同時に、長さにして1mを越える、刃状の何かも大量に飛来してきた!!
それは雨のようにフリーゴアの防衛線に降り注ぎ……一瞬で防壁や駐屯地の数々を、そして逃げ遅れた兵士たちを切り刻み、叩き潰した。
練太郎(子)とミーナはいち早くそれに気づき、統率者と議員たちに民を街に戻らせるように叫ぶ。
「脅威は無くなっていない!みんな逃げるんだ!!」
そして、地面に着弾した黄土色の土石流や銀色の刃物は、練太郎(子)たちの視線の先……たくさんの魔王軍の進撃していた地点に集まってゆく。
《我は魔王スグゼルバ。 許さぬぞ人間ども…
許さぬぞ定命のものども…
余の計画を邪魔したばかりか、我が手駒どもをここまで失わせるとは!
余の力が及ぶ限り、このフリーゴアを、島々を…そしてトロールワールドを破壊する!!》

魔王スグゼルバが実態化した!!!
身体中から、土砂と刃の雨を振らせ、さらに陣地を破壊してゆく。
「ミーナ。死ぬかもしれない。
俺は命をかけて戦う。逃げてくれ。」
「…私はあなたに助けられた。死ぬ時もあなたのそばに居たい。」
ミーナが練太郎(子)の背中に顔を埋める。
練太郎(子)はそっと抱きしめ、少し笑った。
「……ありがとう。」
その時だ。連隊長の1人が2人に駆け寄り、これを使ってくださいと、魔法の矢の入った矢筒を2つ…24本×2筒…渡してくれる。
「私に出来るのはこの程度…口惜しい。壁にもなれない!
どうか、どうかご無事で。」
「ありがとう。助かるよ。」
練太郎(子)はその矢を射手であるミーナに渡し、数歩歩いた。そして、主、女神マーデリンに祈った。
天空から桃色の光がひとすじ、雲を割いて出現すると、練太郎(子)は光に包まれ、たちまちふた周りも大きくなり、筋骨隆々とした姿になった!
これが、クルセイダーである!!
(体力度×3倍、耐久度×3倍。但し、クルセイダー化したターンぶんの最も高い基本能力値のセービングロールに失敗すると、女神の一部となり消滅する。)
「ミーナ、無理するな。」
「わかってる。練太郎もね。」
2人はスグゼルバに向かって歩き出す。
飛来する刃や土石流は、最後まで踏みとどまる魔術師たちが2人に防壁を張り、はじき返す。
そして、練太郎(子)はサルクティの魔除けを天にかざし、叫ぶ。
「来たれ!暗黒の者!
来たれ!不死のもの!
何時は深淵と夢と闇の支配者にして、暗黒の伝道師。
来たれ、カンタフの鉄の暗黒卿、バラハ!!
サルクティの御名において、わが勅令に従うべし!!!」
そして、五色の光が掻き消えると、その遥か向こうに小さなポータル…次元の門…が開き、そこからゆっくりと黒い人影が練太郎(子)たちの前に降り立つ。
「………貴様、あの時の…
一介のクルセイダー風情が、何故我をここに呼び出せた?
サルクティの魔除けだと………?
ほう、スグゼルバか……
……なるほど、理解した。」
鉄の暗黒卿バラハ。
闇の使徒にして、闇の王。
夢渡りの世界の主にして、暗黒銀河を旅するもの。


「…いいだろう。この厄介な魔除けが我を敵としないのは心地よきものだ。
…仕方あるまい。
不本意ではあるが、我の力を貸してやろう。」
黒い煙がバラハから吹き出す。
対するスグゼルバは、先程の土石流と刃を雨あられと練太郎(子)立ちめがけて降り注ぐが、バラハの作り出した暗黒の霧がその全てをどこかへと消し去った。
「……たわいもない。貴様も本体では無いな。
クルセイダーの女、これは化身だ。我と同じく、分身だ。
この程度で我を呼ぶとは……実に定命の者は脆弱だな。」
バラハは首を振りながら全長20メートルほどはあろうスグゼルバに向かって先程の黒い霧を張り巡らせた。
「フン。これで飛来物は届かぬ。
さあ、余興だ。貴様ら定命の者が、神格を相手にどう足掻くのか…
その姿を我に見せよ。」
バラハが振り返り囁くような低い声でそう告げる。
練太郎(子)は大きく頷いた。
「…ありがとうバラハ。
お前の力があれば、俺たちは負けない。
スグゼルバは、俺たちが倒すんだ。行くぞミーナ!!」
練太郎(子)の声に、ミーナが無言で頷く。
そしてバラハも一瞬沈黙して…敵を見た。
魔王スグゼルバ……辛うじて封印前に分離させた己の化身……が、空気を切り裂きながら巨大な拳を振り下ろす。
二人と一神は戦闘の構えを取り、魔王に対峙した。
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