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第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 28「MEMORY」

AWARDS PROFILE Vol. 28

MEMORY

RT: 91%(現時点)
MC: 72(現時点)
IMDb: 7.1(現時点)

 シルヴィアはニューヨーク公営の精神科施設に勤めていて、簡素で計画的な生活を送っている。高校の同窓会から帰る彼女を同級生のソウルが不気味に尾行した翌朝、彼女は凍えたソウルを玄関先で見つける。この最悪な再会は二人の過去への扉を開けて、互いに深い影響を与えることになる...。

 「父の秘密」や「或る終焉」、「母という名の女」など市井の人々の心の複雑な機微を描き、カンヌ脚本賞等、高い評価を受けるメキシコ生まれのミシェル・フランコの最新作となる本作。久しぶりの再会をはたした男女の過去と現在が、重層的なテーマを伴って重なり合う見ごたえのある人間ドラマに仕上がっているようだ。主演は「タミー・フェイの瞳」でオスカー主演賞を獲得したジェシカ・チャステイン。彼女の人生に大きく影響を与えるソウル役には、オスカーには恵まれていない実力派ピーター・サーズガード。既にヴェネチア国際映画祭で公開されており、手堅い評価を得ている。明確なメッセージを避けることで、特定の解釈を押し付けるのではなく議論を呼び起こす作品とのことで、二人の大人が過去の亡霊と向き合う様をじっくりと見つめる。作品の持つ重要性がじわりと染み渡り、映画が終わってからも余韻が残り続ける。現代社会におけるメンタルヘルスへの投げかけとも受け取れるだろう。キャストは抑えた演技で素晴らしく、中でもチャステインとサーズガードが傷ついた大人が苦しみを理解する出汁が取れそうな深みのあるパフォーマンスを披露しているとか。特にサーズガードの演技は穏やかにして神秘的で、乾いた繊細さを持ち合わせているとのこと。助演ながらヴェネチア国際映画祭で男優賞に選ばれている。この二人が映画をより意味のあるものにしていると太鼓判を押されている。監督らしい厳格さと感情の激しさを保ちながら希望をわずかに浮上させる、フランコ監督としては新境地をみせているらしい。

そろそろ長後の都知事も新境地を見せなければなりません。

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