新しい恋が過去への扉を開く。凪のような心がさざ波を立てる〜アンドリュー・スコット〜
ACTORS PROFILE Vol. 13
アンドリュー・スコット
「異人たち」
長後の都知事が選ぶ代表作
「フリーバッグ」
1976年アイルランド生まれ。新しい恋が過去への扉を開く。凪のような心がさざ波を立てる。
人の気配のないタワーマンションに住む脚本家のアダムは、同じマンションに住む住人ハリーと出会う。アダムはハリーと距離を縮めるのだが、一方で幼い時に亡くした両親との記憶の中に迷い込む。
▲後年、数多くのスターを生み出した「バンド・オブ・ブラザーズ」にスコットも出演していた。一話のみの出演だが、澄んでいて、また哀しみを湛えた瞳は当時から同じだった。実は彼は小さい頃から俳優として舞台に立っていたそうだ。だからか舞台やテレビドラマの出演が多い一方で、まだ映画での活躍は少ない印象だ。昨年公開の中世イギリスを舞台にした「少女バーディ」で、おてんばな娘をどうにかして金持ちと結婚させたい困窮した一家の主を演じていた。助演で嫌われどころではあったが、絶妙な塩梅で温かいハートをキャラクターに注ぎ込み、複雑な親心を体現していた。
やはり彼の代表作はテレビドラマにある。特に代表的な作品は「SHERLOCK」と「フリーバッグ」だ。前者ではシャーロック・ホームズの天敵でスマートなカリスマ犯罪者モリアーティ、後者では主人公フリーバッグが出会うセクシーな神父を演じた。孤高の人を演じると独特のカリスマが出てくるのが彼の特徴なのかもしれない。特に後者の、男にだらしないフリーバッグが、恋心を抱くホットな神父は彼女が手を出したくても出せない存在として物語を盛り上げていた。
▲今作でもスコットは子供の頃に親を亡くし、今や周囲と孤立した中年アダムを演じている。そんな彼が隣人と新しい関係を築き始めたところ、昔住んでいた家で、亡くなった頃の姿をした両親と再会する。困惑しながらも、アダムは伝えきれなかった思いを伝える。ファンタジーの色が濃い作風なのに、スコットの地に足の着いた演技がキャラクターの心情を繊細に浮かび上がらせる。
▲結局、人は他人がいなくては存在しえない。愛すべき他人が現れたことで、スコットの哀しみを帯びた瞳がまた輝きだす。メスカル演じる他人との間で生まれる火花がかけがえのない温もりを与える。
アンドリュー・スコットの関連動画
・Variety誌恒例のACTORS ON ACTORSより、グレタ・リーとの対談
・米アカデミー協会でのインタビュー
・「フリーバッグ」より。ホットすぎるぜ。