生放送まで90分!情熱と狂気が土曜の夜を伝説の1ページへと変える「SATURDAY NIGHT」第97回アカデミー賞期待の作品紹介Vol. 23
AWARDS PROFILE Vol. 23
SATURDAY NIGHT
各映画サイト評価
Rotten Tomatoes: 79%
Metacritic: 63
IMDb: 7.1
Letterboxd: 3.6
あらすじ
1975年10月11日11時30分。アメリカのテレビの歴史を変える生放送コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の放映が始まった。だがその舞台裏はカオスの一言。集められたコメディアンとライターたちは、揃いも揃って怖い者なしの反逆児、問題児たちばかり。まだ年若いプロデューサーのローン・マイケルズは問題解決に奔走していた。初回放送までの90分間、それは出演者の、プロデューサーの、アメリカのテレビ史を運命づけた瞬間となる...。
監督・キャスト・注目ポイント
2025年には50周年を迎える長寿コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」。数々の名コントを生み出し、数多くのコメディスターを輩出してきたレジェンド番組にも始まりがあった。今作では、自由な若者ばかりの出演者たちを束ねる、番組プロデューサーのローン・マイケルズを中心に番組スタートの混沌を描き出す。
監督は「JUNO/ジュノ」や「マイレージ、マイライフ」、リブート版「ゴーストバスターズ」シリーズ等で知られるジェイソン・ライトマン。彼の父アイヴァン・ライトマン監督は、数々の「サタデー・ナイト・ライブ」出演者と映画で仕事をしており、監督にとっても一際思い入れのある作品に仕上がっていそうだ。脚本は監督とギル・キーナンが共同で執筆している。
番組オリジナルキャストにはチェビー・チェイス、ギルダ・ラドナー、ダン・エイクロイド、ラレイン・ニューマン、ジョン・ベルーシ、ギャレット・モリス、ジェーン・カーティン、あとアンディ・カウフマンと錚々たる面々が揃っており、今作はキャスティングの時点でかなりチャレンジングだ。だが、そんな個性と個性が入り乱れる困難なキャスティングを今作は達成する。コリー・マイケル・スミス、エラ・ハント、ディラン・オブライエン、エミリー・フェアン、マット・ウッド、ラモーン・モリス、キム・マツラと有名、無名の分け隔てないキャストをセレクトし伝説を再現する。
ローン・マイケルズやロージー・シャスター等、裏方のプロデューサー、脚本家、スタッフ陣にはガブリエル・ラベルやレイチェル・セノット、フィン・ウルフハード、クーパー・ホフマンが扮し、テレビ業界の大物たちにはウィレム・デフォーや、J・K・シモンズといったツワモノが揃っている。
16mmフィルムで撮影された粗い映像はドキュメンタリーのようで、緊張感のある現場の空気を捉える。また、当時の撮影スタジオフロアを再現した美術セットも素晴らしい仕上がりだそう。ジョン・バティステによる音楽は、撮影したばかりの映像を見て、即興で生み出されているそうだ。伝説の夜を再現した今作は、テルライドやトロント映画祭でお披露目されて、上々の評価を得ている。
評価
番組やキャストの本質をピンポイントに突きながら、その伝説の夜の熱狂をエネルギーたっぷりに描いたコメディ作品とのことで、なかでもキャストのジャズのような掛け合いが見事との評。一息もつかせることのない緊張感と、カオスと共に無限に上昇していく作品の熱気に魅了される。もちろん「SNL」オタク心をくすぐる小ネタも爆笑を誘う瞬間もふんだんに盛り込まれている。スタジオの熱気を捉える撮影や編集、音楽といった要素も良いが、やはりアンサンブルキャストが一番の見どころだそうだ。
チェビー・チェイスを演じたコリー・マイケル・スミス、ダン・エイクロイドを演じたディラン・オブライエンの本人の特徴を捉えたそっくり演技に驚かされるが、今作の実質的主人公ローン・マイケルズを演じるガブリエル・ラベルのパフォーマンスは特に評価を集めている。あらゆる方向に気を配り、放送局の上層部からのプレッシャーに耐えながら、現場をまとめていく、野心溢れる若手プロデューサーの不安が画面を通じて伝わってくる。
テレビの歴史が変わる熱狂の夜を捉えている一方で、正確性に欠ける点や、その熱気の表層をなぞるだけに終始する点、物語が捌き切れてない点など一定数の否定意見もあるが、毎週、限られた時間の中で笑いの時間を準備する番組の裏側にある苦しみと楽しさを凝縮することで、個性溢れるコメディアンと裏方スタッフが笑いのために奮闘する姿が次第に、アーティストたちが団結して一つのものを作り出すという芸術の美しい姿と重なってくる。
キャストとスタッフの情熱と狂気が伝説を生む瞬間を目に焼き付けろ。