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マエストロの全てを受け入れ、愛し続けた〜キャリー・マリガン〜

ACTORS PROFILE Vol. 22

キャリー・マリガン
「マエストロ:その音楽と愛と」


1985年イギリス生まれ。マエストロの全てを受け入れ、愛し続けた。

 フェリシア・モンテアレグレは、俳優・歌手にして、20世紀を代表する音楽家レナード・バーンスタインの長年の妻だ。電撃的な出会いから彼女が亡くなるまでの長い歳月を、夫婦は寄り添い支え合ったが、フェリシアは苦しみも抱えていた。

 ▲2005年に「プライドと偏見」で映画デビューして以来、マリガンの作品はその一つ一つが重厚である。一作ごとにベスト演技を塗り替えている印象すらある。彼女のブレイク作は「17歳の肖像」だ。だいぶ年上の男との恋愛で、大人の世界に足を踏み入れる高校生ジェニーを演じた。学校に通うあどけない少女の姿と、夜の社交界の垢ぬけた姿と一役で幅の広さをみせた。同作の演技により、24歳の若さでオスカー主演候補になると、その後は破竹の勢いで代表作を塗り替えていく。

「SHAME シェイム」より。

「わたしを離さないで」と「SHAME」、「ドライヴ」、「華麗なるギャツビー」、「未来を花束にして」...。主演でも助演にまわっても、ファスベンダーやゴズリング、ディカプリオといったスターを相手にしても力強い存在感。「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」では見事な歌声も披露している。

「ワイルドライフ」より。

この5、6年は作品を厳選しているようで、その中でも「ワイルドライフ」と「プロミシング・ヤング・ウーマン」はパンチが効いていた。前者は静かに夫との間にある亀裂を深めていく主婦ジャネットを、後者では夜な夜なクラブで酔ったふりをして、手を出そうとしてきた男たちをどん底に陥れる謎めいた女キャシーを演じた。マリガンは、嫌われかねないキャラクターたちに温かく、あるいは生々しい血を送り込むことで目の離せない人物像を創り上げていた。

 ▲偉大な音楽家レナード・バーンスタインを描いた「マエストロ:その音楽と愛と」で、マリガンはバーンスタインの長年の妻フェリシアを演じる。社会でも家庭でも大きな存在だった彼に添い遂げた夫人の思いを静かに明らかにする。バーンスタインを演じるクーパーとのケミストリーは、時に微笑ましく、時に愛らしく、時に恐ろしく残酷な夫婦の関係を体現する。

 ▲バーンスタインの表も裏も全てを愛し、受け入れた彼女の表情。美しくも胸が張り裂けることは間違いないだろう。


キャリー・マリガンとアカデミー賞

・第82回アカデミー賞(2009)主演女優賞候補:17歳の肖像

 キャリー・マリガンの初めてのオスカー候補は24歳のとき。「17歳の肖像」でのパフォーマンスだった。新たなスター誕生。彼女の持つ輝きは特別なものだ。この年の受賞者は「ジュリー&ジュリア」のメリル・ストリープとの激戦を制した「しあわせの隠れ場所」のサンドラ・ブロックだった。90年代から数々の映画で愛され続けた彼女にとって初めてのノミネートで初の受賞。ウィットに富んで、泣かせる感動的なスピーチでした。

・第93回アカデミー賞(2020)主演女優賞候補:プロミシング・ヤング・ウーマン

 まさかここまでオスカーと遠ざかるとは。優れた演技を数多く放つもオスカーには縁がなかったマリガンの2度目のノミネートは前回から11年後の2020年だった。「プロミシング・ヤング・ウーマン」でキュートと毒が混ざったポップなリベンジヒロインを演じた。この年の主演女優賞は混戦で、マリガンの他にも「ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ」のアンドラ・デイ、「マ・レイニーのブラック・ボトム」のヴィオラ・デイヴィスが前哨戦を受賞していて、タイムリーな題材のマリガンにも受賞のチャンスが大いにあった。それでも受賞は「ノマドランド」のフランシス・マクドーマンドに渡った。彼女はオスカー作品賞に輝いた本作で、ドキュメンタリーと見紛うようなリアルなタッチで、車で暮らすノマドを演じた。3度目の受賞。すごいです。


キャリー・マリガンが参加した毎年恒例の企画たち


おまけ

 この曲が大好き。

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