第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 11「ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男」
AWARDS PROFILE Vol. 11
ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男
RT: 85%
MC: 68
IMDb: 6.5
1963年8月28日に、アメリカの歴史上でも極めて重要な運動である人種差別撤廃を求めるワシントン大行進が行われた。この一大運動の裏には、激動の歴史の渦に埋もれたカリスマ主催者バイヤード・ラスティンの存在があった..。
キング牧師の「I have a dream.」の演説でも有名なワシントン大行進から60年を迎える今年、大行進を共同で主催したバイヤード・ラスティンの物語を映画化する。監督は「マ・レイニーのブラック・ボトム」で高い評価を得たジョージ・C・ウルフ、脚本はジュリアン・ブリースと「ミルク」でオスカー脚本賞に輝いたダスティン・ランス・ブラックが務めている。差別の色濃い時代に黒人として生まれ、また同性愛者でもあった革命児ラスティンを演じるのは、近年活躍目覚ましいコールマン・ドミンゴ。他にもクリス・ロック、グリン・ターマン、オードラ・マクドナルド、ジェフリー・ライト、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフといった実力派がキャストに連なっている。オバマ夫妻の制作会社ハイアー・グラウンド・プロダクションズがバックアップする今作は、テルライド映画祭でお披露目され、強力な反応を得ている。語るにふさわしい、歴史に埋もれた人物についての伝統的でありながら、生き生きとした作品との評。監督は、題材に等しい情熱と信念をもって物語を語ることに成功している。自由と正義を信じたラスティンが、人種や年齢の違いに関わらず一大ムーブメントを創り上げる様に心が奮い立つ。一方で、伝記映画としてスタンダードすぎるという否定意見はあるものの、黒人であり同性愛者でもあったことで、味方の側から攻撃されることもあったというラスティンの複雑な立場が描かれている。なによりも映画のエンジンとなるのはラスティン演じるドミンゴのパワフルなパフォーマンス。社会の抑圧に屈することなく平和的に解決へと導こうとする姿が眩しい。「天使的なトラブルメイカー」を掲げて、人々をまとめた彼の精神は時代を越えていく。そして平等への道は単一のグループの満足であってはならないと思い出させる作品だとのこと。NETFLIXで配信中。