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第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 20「フローラとマックス」

AWARDS PROFILE Vol. 20

フローラとマックス

RT: 94%
MC: 76
IMDb: 7.1

 シングルマザーのフローラは、ベビーシッターなどをしながら、素行の悪い一人息子マックスを育てていた。マックスの誕生日プレゼントに彼女がギターを贈ったが、彼は全く興味を示さない。思い立ったフローラはそのギターで、オンラインのギターレッスンを受け始める...。

 音楽を中心にロマンス、ドラマ、コメディを展開させる作品が高評価を受けるジョン・カーニー監督による7年ぶりとなる今作は、彼の地元であるアイルランドのダブリンを舞台に母息子の絆を音楽を通じて描く。主人公フローラを演じるのは、イヴ・ヒューソン。彼女とオンラインで仲を深めるギター講師ジェフにジョセフ・ゴードン=レヴィット、彼女のかつてのパートナーにしてマックスの父でもあるイアンにジャック・レイナー、そして音楽の才能があるマックスにオレン・キンランなどが出演している。インディーズ映画の映画祭、サンダンス映画祭で公開されて、観る者の心を温める、万民に愛される作品に仕上がっている。カーニー監督曰く、全ての母親に捧げる作品とのことで、若くして母親になったフローラにとりわけ愛情が注がれている。息子マックスは14歳になるが、フローラもまだ若く、夜はクラブでダンスをして遊び、ダメな男と関係を持ち、元パートナーのイアンに未練があり、手のかかる息子にうんざりもしている。欠点ばかりで生活の中で熱中できることもなかった彼女が、ギターを手に音楽を奏でることで、人生が違う彩りをみせはじめる。その過程が美しい。ヒューソンの目が文字通り輝き始める。ギター講師ジェフとの優しく、色気のあるコラボレーションが楽しい。ゴードン=レヴィットの優しい個性が効いている。息子マックスと音楽を通じて新たな絆を作り始めるのも微笑ましい。そして監督の本領でもある音楽が絶妙。過去作のような音楽を生業にしている人々による完成された楽曲というよりもアマチュアのラフなざらつきがあるのが魅力的だ。そう、これは音楽を中心に生きる人というよりも、生活の中に音楽がある人たちのストーリーということだ。ストーリーにやや欠陥もあるが、愛すべき作品であることには間違いない。Apple TV+で配信中。

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