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めちゃくちゃ可哀想なやつ…じゃなかった~バリー・コーガン~
ACTORS PROFILE Vol. 33
バリー・コーガン
「Saltburn」
1992年アイルランド生まれ。めちゃくちゃ可哀想なやつ…じゃなかった。
オリヴァーは名門オックスフォード大学に通い始めたが、パッとしない性格と貧しい生い立ちからか、周りから相手にされない。そんなときに人気者の同級生フィリックスと出会い、仲良くなる。ほどなくしてオリヴァーは夏休みにフィリックスの実家の豪邸へと招かれる。
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▲コーガンといえば「聖なる鹿殺し」や「ベルファスト71」といった作品からわかる通り、不気味な青年を演じさせれば右に出る者はいない。単に不気味なだけではなくて、その中に粘り気があるのだ。一度捕まえたら離さない、そんな感じ。もちろん「ダンケルク」や昨年初のオスカー候補に挙がった「イニシェリン島の精霊」のように人の好さそうな役もできる。その幅の広さが素敵だ。
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▲だから「Saltburn」の立ち上がりからして、後者のモードのようにみえる。キャンパスライフを楽しむ皆を遠巻きに見ている孤独な青年。一気に共感してしまう。可哀そうに。だから人気者にして大金持ちのフィリックスと友達になれた時に、こちらも良かったね、なんて思ってしまう。ただ仲間になれたらなれたで、フィリックス以外の人間からの気まずさを感じ取る。「なんか彼といると気まずいのよね」なんて陰口も飛び出す。可哀そうに。また豪邸ではフィリックスの家族はオリヴァーが語る貧しく危険な生い立ちに興味津々。それでも歴史ある豪邸でオリヴァーは徐々に居場所を見つけていく。
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▲ただこれは導入に過ぎない。話が展開するにつれて、今までオリヴァーと共に感じていた貧富や階級の差や様々な感情のヒリヒリが逆転していく。フィリックスの問題を抱える姉。フィリックスのいとこ。フィリックスの母。そしてフィリックス本人。大金持ち一家の間にある隙間にオリヴァーが顔を出す。あの嫌な粘り気と共に。
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▲すべての力関係がリバースし、崩れ落ちていく。その残骸の中でオリヴァーはダンスするのだ。コーガンでなかったら作品に説得力が出ない。誰も出来ない役をやってみせたのだ。あんた、最高だよ。
P.S.ここで「一流シェフのファミリーレストラン」でお馴染みアヨ・エデビリのLetterboxdに投稿した最高のレビューを添える。
"My man's is doing all of this but can't eat runny eggs?"
「彼あれだけやりたい放題でも生っぽい卵は食べられないの?」
バリー・コーガンとアカデミー賞
・第95回アカデミー賞(2022)助演男優賞候補:イニシェリン島の精霊
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アイルランドの恐ろしい子供だったコーガンの初のオスカー候補は、昨年の「イニシェリン島の精霊」でのパフォーマンスだった。コリン・ファレル演じる主人公と仲良くなりたい青年ドミニクを演じた。気は良いのだが、島のみんなからバカにされる役どころだった。ほんの一瞬見せる悲しみの表情にハッとさせられる。受賞したのは「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のキー・ホイ・クァンだった。ミシェル・ヨー演じるコインランドリー店主の夫ウェイモンドをハートフルに演じた。子役から活動し、長らく俳優業から遠ざかっていた彼の一発逆転のオスカー受賞は涙なしには見られない。