見出し画像

第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 27「アイアンクロー」

AWARDS PROFILE Vol. 27

アイアンクロー

RT: 91%(現時点)
MC: 71(現時点)
IMDb: 未定

 プロレス界にその名を轟かせたフォン・エリック家の兄弟たちは、兄弟の固い結束の下でリングの内外を戦ってきたが、競争激しいプロレス業界、支配的なコーチにして父親の影の下で、彼らは身も心もボロボロに追い詰められていく...。

 2011年の監督デビュー作「マーサ、あるいはマーシー・メイ」で一躍ブレイクしながらも、その後の監督作が2020年の「不都合な理想の夫婦」のみという、インディーズ映画界の寡作の鬼才ショーン・ダーキンによる悲劇のプロレス兄弟たちの実話を基にした本作。フォン・エリック家といえば、鉄の爪一家とも称されるプロレスファミリーで、才能に溢れ大活躍したものの、若くして兄弟が連続して亡くなり、呪われた一族のレッテルを貼られた。今作は現在、ただ一人存命の鉄の爪一家長男のケビンを主人公に物語が展開する。ケビンを演じるのはザック・エフロン。ディズニーでのアイドル的活躍からムキムキコメディ路線を経ての、ハードでドラマチックなパフォーマンスに期待が高まっている。相次いで不幸な死を遂げる兄弟たちに、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、スタンリー・シモンズら若手実力派俳優が顔を揃えている。強権的な父フリッツに「マインドハンター」で有名なイカついホルト・マッキャラニー、母ドリスに「ER」でお馴染みモーラ・ティアニーが出演。あとリリー・ジェームズも出てるよ。ダーキン監督は心理ドラマの名手で、抑えた演出の中で静かに登場人物の心が歪んでいく様を描くことに長けている。今作でも父からのプレッシャーや周囲からの人気や期待が、プロレス兄弟にもたらす負の側面をじっくりと見せてくれることだろう。ギリシャ神話のようなタッチは、アメリカの家族の悲劇をほろ苦い伝説へと昇華する。名声や家族、運命についての難しい問いに答えを導き出す。男たちの心の不協和音は観る者をどっと疲れさせることだろう。全編哀しみに満ちた物語とも評されている。エフロンは従来のイメージを脱し、悲劇の中を生き延びたレスラーを熱演。弟ケリーを演じるホワイトは大幅に肉体改造し、同役に挑んでいる。迫力のプロレス場面にも期待が高まっている。幸せの絶頂と不幸のどん底の連続ラリアットの果てに、呪われた一族と呼ばれた一家の兄弟の絆が浮かび上がる。来年4月5日公開予定。

時は来た、それだけだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?