第96回アカデミー賞期待の作品紹介No. 5「マエストロ:その音楽と愛と」
AWARDS PROFILE Vol. 5
マエストロ:その音楽と愛と
RT: 82%
MC: 77
IMDb: 7.2
20世紀後半のクラシック音楽をリードしたスター音楽家、レナード・バーンスタインと妻フェリシア・モンテアレグレの生涯にわたる愛の物語...。
近代クラシック音楽を牽引した伝説のレナード・バーンスタインを映画化する大役を担うのはブラッドリー・クーパーだ。2018年の監督デビュー作「アリー/スター誕生」ではカメラの表裏で大活躍したが、今作でも凄まじい仕事ぶりだ。監督・主演・製作・共同脚本を成立させるハードワーカーぶりに感服する。前作に引き続き音楽に関わる作品だが、かねてから指揮に対して強い興味を持っていたという彼だけにその熱意は並ではない。俳優として活動していた長年の妻フェリシア・モンテアレグレを演じるのはキャリー・マリガン。今作の物語は、レナードとフェリシアの夫婦関係を軸にしているだけに、彼女の存在は作品の核となる。そんな今作は、ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映され、上々の評価を得ている。複雑で洗練された、近年まれにみる大人の恋愛映画との評価。バーンスタインの音楽に対する情熱や規格外な欠点など、彼のふり幅のある性格を包み隠さず描き出す。レナードの物語はフェリシアの物語でもあり、彼女の視点から彼の陰から陽を浮かび上がらせる。フェリシアや子供達がいながらも、他の男性と恋愛関係にあったレナード。それでも壊れることのなかった二人の繋がりを掘り下げることで、芸術が芸術家に課す犠牲と、芸術家の家族に課す犠牲が際立つ。また、レナードが捉えどころのない奇妙な人物なだけに、フェリシアが作品の力強い錨となっている。モノクロとカラーを使い分けた息を呑む撮影をはじめ、編集、美術、衣装、メイクアップ、そしてクーパーとマリガンの主演カップルが、作品をより高い次元へと引き上げる。ダイナミックな音楽をスリリングに用いて作品は、やがて訪れる哀しみの深淵を覗き込むことに成功している。スピルバーグとスコセッシが製作に名を連ねていること、レナードとフェリシアの子供達も映画に賛辞を贈っていることからも、そのクオリティの高さがうかがえる。12月20日よりNETFLIXで配信予定。
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