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夜の病棟

急性期病棟から、ケア病棟に移動して違うのは、夜の病棟の様子だった。

病状が安定した方達とはいえ、後期高齢者の方がほとんどの現状。認知症の方もかなりいらっしゃる様子。

さらに、移動してきたばかりで、環境に慣れるまで、せん妄という症状が出る方も少なくない。

見当識が低下して、幻覚や妄想が出たり、思い違いをしたりと混乱してしまうのだ。せん妄は夕方から夜間に症状が出ることが多い。


ある日、まだ太陽が上る前の午前4時頃、女性の叫び声が遠くから聞こえて目が覚める。  

「誰か助けてくださーい。殺されるー。」
「お兄ちゃーん、助けてー。」

と助けを求める声が病棟に響く。
しばらくその声が続くと、今度はその声に反応し、男性の声で、

「待ってろー。今、助けに行くからなー。大丈夫だー。」

という返事が帰ってきた。
病棟に2人の掛け合いの声が響く。

また、ある日入院してきた高齢男性は、とても威圧的な言葉を看護師に向けて発している。

「おまえ!早く俺の体を起こせよ!」
「何やってんだ!」

もともとは、この様な性格の方ではないと思われるが、自分の病状や入院していることを認知できておらず、混乱してしまうのだろう。

また、あるおばあさんは、帰宅願望が強く何度もナースコールを押して

「お姑さんの夕飯を作らないといけないから、早く家に帰りたいんだけど。私、怒られちゃう。」

とタイムスリップして、昔の記憶が蘇える方もいる。

看護師さん、看護助手さんは本当に良く頑張っている。特に夜間帯は、勤務人数が少ないので、なおさら大変なのだ。


私はかつて若い頃、特別養護老人ホームに勤務していた事がある。まだ介護保険制度がスタートする前の時代。

認知症の方と、寝たきりの方が居住するフロアーの担当だったので、その頃の事を思い出す。

夜勤は、事故が起きやすい時間帯でもあるので、緊張感があった。

日が昇って早番の職員が出勤してくると、ホッとしたものだ。


今日もここにいる皆さんが、ケガすることなく無事に朝を迎えられますように。












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