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中途採用者のトリセツ

「取扱説明書」はあまり良い表現ではないかもしれない。
でも、これは中途採用として何社も渡り歩いた私が使う言葉なので、謝罪は無しで、これから続く内容を是非読んでほしい。

例えば経験値の高い、結果を残してきた人が中途採用の面接に来たとしよう。
欲しいポジションにその経験、そして人柄がマッチしていれば、是非とも、うちに来てほしい!と思うだろう。

私も面接をする立場になった事が何回もあるからこそ、わかるのだけれど、凄く良い人材が見つかった時、"是非来てほしい!"という思いの方が強くなり、"果たして私達は、彼(彼女)に明確な役割を渡せるのか。" "この人が活躍できる場所を本当に提供できる、リソースはあるのか。" という考えは、ついつい後回しになるのではないだろうか。

その結果、採用がゴールとなり、例えば、凄く小さいことだけれど、そのキャリア採用の方の転職初日にオフィスに殆ど人がいないという事もあり得る。
(そのような状況に陥った優秀な先輩を何人も見てきたし、自分も数回経験した。)
誰からも歓迎されていないような、そんな気持ちにすらなってしまい、転職早々、もう次の転職を考えてしまう....
このような事も採用する側にとって、"採用"がゴールになり、その先を考えていないから、起こり得るのではないか。

そして、タイトルに戻るのだが、"優秀な中途採用のトリセツを理解している人は何人いるのか?"という疑問だ。
取扱説明書という名の「扱い方」「飼い慣らし方」とでも言おうか…..
私は会社員である限り、会社に雇われている身であり、仕事の経験と貢献に応じた報酬が支払われるものだと認識している。(もちろん、フェアではない内容は五万とあるが...)
だから、私はできる限り忠実な”会社の犬"でありたいと望んでいる。そもそも私は犬へのリスペクトが人間へのそれより勝るところもあるので、あえて「犬」と呼ぼう。
けれど、もちろん居心地の悪い場所からは逃げたいし、大切にされない会社に貢献する気はない。
飼い犬が噛む事には理由がある。
犬が理由もなく人間に歯を向けることや、吠え続けることは、殆ど無いと断言できる。

多くの会社が、中途採用の扱い方に苦戦しているのではないか。
彼らのキャリアを評価して採用したのだからこそ、彼らに任せるべきところ、信頼すべきところは信頼したら良いのに、なぜか自社の方法に変えようとする会社、なぜか新卒と同じように一から教え込もうとする会社。
まるで、中途採用の人権、キャリアを全て無視するかのように、扱いを間違える会社の多さに驚く。
「その会社ではそもそも実績もないから、ゼロに等しい」という考え方をする人も多くいるようだ。
でも、キャリア採用というのは、その人が作ってきたキャリアを評価し、だからこそ、そこまでの年収が次の会社の年収を検討する材料になるのではないか。
それは、そこまで頑張ってきた、その人の努力や背景を本来は理解した上で提示されているはずだ。

なぜ、この人はこの年収なのか。
なぜ、そのように評価されてきたのか。
それにプラスでオファーする場合、この人には何を期待し、自分達はその期待を最大限実現できる機会を提供できるのか。

転職した先で上司になった全員に言われた事がある。
"新しい風を吹かしてください。"
"自由に動いてください。"
けれど、その言葉を信じて"新しい風を吹かした"際、多くの企業で"出る杭は打たれる"を経験した。
"自由に動いてください。"を信じた際は"それは、うち流ではない。"と言われた事もある。
そして、どの会社でもその会社の色に染まるよう、テンプレに押し込まれていき、息が詰まる思いを何度もした。

結果を残してきた、キャリア採用で、人を雇った時、理解すべきは"彼らは馬鹿ではない。"という事。
そのため、彼らは"この会社のためになるには、どうすれば良いのか" "どう貢献できるか" の前提の元、働いていると思う。
疑問に思うことでも、まずは郷に入れば郷に従えの精神で、やり抜こう….そうやって必死で馴染めるように努力をしているはずだ。
(一部、そうでない人もいるかもしれないが、ここではその人達は"キャリア採用"と呼ばない。)
給与を貰い、保証してもらっていることを忘れるほどの馬鹿な人はキャリア採用とならないはずだ。

それを理解した上で、転職してきた人が輝かないのであれば、それはその人だけにではなく、自分の足元に原因がある可能性を探るべきだ。
自分の価値観を押し付けてはいないか。
意見をそもそも聞く姿勢であるのか。

キャリア採用者が言葉を発しなくなったら黄色信号だと思う。

そもそも、この国で転職することは勇気がいる。
特に日本は"転職回数が多い人は問題がある人"というレッテルを貼る。
「転職希望者」は年々増加しているにも関わらず、実際の87%は1年後に転職していない。
けれど、日本の年間平均昇給額は6,000円前後。
平均2%程増に関わらず、転職した場合は10%増が平均だ。又、今の世界では、働く舞台は日本だけではない。
優秀な人材は勇気を出してでも転職するだろう。
だからこそ面接では、なぜその人が転職したのか….その人の転職履歴だけでなはく、前職の勤め先の足元をも見る必要があるのではないか。

繰り返すが、犬は理由がないと逃げない、噛まない、吠えない。
それを知らない、採用する側の人間の多さが、優秀な人材を手放す理由ではないのか。
それは、会社だけではない。
この国も。なぜ優秀な人材が流出するのか....問題は常に片方=行動した側にだけあるのではないということ。
それを、理解し、自らを見返す事が重要ではないだろうか。

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