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ヨーロッパで考える「限られた時間」の使い方

僕は日本で博士号を取得し、フィンランドで研究者として働いています。

日本とヨーロッパの研究者に共通すること。それは、並々ならぬ情熱を研究にそそぐ才能を持っていることです。

一方で「限られた時間」の使い方に対する考え方は大きく異なるなと感じています。

個人的経験かつ研究職という条件付きではありますが、今回はヨーロッパと日本の「限られた時間」に対する考え方と仕事へのアプローチについて書こうと思います。


時間をうまく使いたい

「時間」、それは平等に与えられた有限な資源です。

どんなスーパーマンでも1日24時間が平等に与えられています。

フィンランドで働き始めて1年以上が経ちましたが、語学能力や職場環境の違いから、いまだに簡単なことでも躓くことがあります。上手に時間を使って、できるだけ多くの成果を出したいと思う日々を過ごしています。

フィンランドで働き始めて気づいたことの1つ。それは、「時間」の使い方に対する考え方の違いが仕事(研究)の初動に現れるということです。

もちろん全員がそうというわけではないのですが、日本型とヨーロッパ型に分けて考え方の違いを挙げてみます。

日本型とヨーロッパ型の違い

日本にいるときによく言われていたのは
「とにかく手を動かそう」ということです。

人間だれしも時間は有限なもの
時間が限られているからこそ、できる限りたくさん実験をして具体的なアウトプットを増やそう
こんな考え方がベースにあると思います。

一方ヨーロッパの研究者に言われることは
「まずはみんなで考えよう」ということです。

こちらは、人間誰しも時間は限られているからこそ、なるべく多くの時間をかけブレインストーミングと議論を行い、熟慮を経て確度の高い道を取るべき、というアイデアが根底にあると思います。

このように、日本とヨーロッパでは発想が真逆であることに衝撃を受けました。

フレームが大事

何か新しい研究を始めたいとき
日本では、ボスにクリアなデータを持っていくと食いついてもらえることが多かったです。

一方、ヨーロッパではデータはもちろんですが、むしろ「根本的な問いは何か」や「新規性、アイデアのミソ」、「この研究室でやるべき理由」などフレームワークが強く求められます。

フィンランド初日に「研究計画を1枚のイラストにして持ってきて」とボスに言われたのが印象的です。

また、経験が長い研究者にはこう言われます。
・1つの実験で1つのクエスチョンに明快に答えられるのが望ましい
・よりシンプルな実験でより多くの洞察が得られるのが望ましい

独りよがりにならないのが大事

近年、情報科学分野の発展にともない、生物学でもコンピュータを用いた測定や解析が増えてきています。

ですが、自分が専門にしている分野はいまだに (?) 生き物を相手に手作業で実験を行うことが多い分野です。

様々な制約のもとで、マンパワーでもって研究を進めなければならないことは日本でもヨーロッパでも変わらないなと感じます。

生命科学をやる以上、馬力が必要なのは避けられず、また一般論として時間が有限な資源であることも明白です。だからこそ、「限られた時間」をどう捉え、どのように配分するかは重要な観点です。

僕は上に挙げた日本とヨーロッパの考え方のどちらにも長所・短所があると思います。

重要なのは、「実験」も「思考」も独りよがりにならないことでしょう。アイデア、計画、得られたデータ、それらが独創的であることは欠かせません。ですが、多くの研究者に検証されブラッシュアップされることも重要だと思います。

まず手を動かすにしろ、頭を動かすにしろ、研究室やコミュニティーの中で仕事をしている意識が大事なのでしょう。

研究の進め方は研究者のオリジナリティーに通じるところなので、どんな風に研究を進めていけばいいのか思案する日々です。

余談

記事の最後にフィンランド語の小ネタを紹介しています。

今回紹介するのは「冷蔵庫」

フィンランド語では「Jääkaappi (ヤーカーッピ)」。Jää = 氷、Kaappi = キャビネット。英語の「Refrigerator or Fridge」= 冷蔵保存する道具、よりも日本語に近い意味合いなので親近感がわきます。

日本の研究室では冷蔵庫に番号やアルファベットを振って識別していたんですが、フィンランドの冷蔵庫はなぜか人名がついています。ややこしくて試薬の場所が中々覚えられません。

他の国ではどうなんでしょう?
コメントしていただけると嬉しいです。

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