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クリスマスイブ、君が生まれた日。
空箱 椿
プロローグ
あたたかいお水の中に、君はいたことを覚えていました。
お水は「羊水」とよばれて、君は眠ったり起きたり、体操したり、小さい世界はここちよかったのです。私は外の世界から話しかけてみました。
「お母さんだよ。無事に生まれてきてね」
男の人の声もしました。
「お~い。お父さんだぞ!元気に生まれてくるんだぞ」
と、わたしたちは、お腹を撫でたので、君は嬉しいのか足でポーンとタッチしました。
「お父さん、この子お腹を蹴ったわ!」
しあわせでした。君はもうすぐ、わたしとお父さんの待つ、外の世界に出ていく日がだんだん近づいてきました。ちょっとこわいけれど、わたしは早く生まれてきて欲しかったのです。
ちょうど、クリスマスイブの夜、お水の入っていたカプセルがやぶれて、羊水が吹き出して君はこの世に生をうけました。
君は「生まれたよ!」と言うように、思いきり泣きました。
「元気な男の子ですよ!」
と、助産師さんは、わたしに告げました。
わたしと繋がっていた、へその緒も切ってもらい、産湯と言う初めてのおふろにもつかり、これでひとりのにんげんになりました。だけれども、ひとりでは、何もできません。わたしと初対面しました。でもまだ、眼がひらきません。
わたしは身体を拭いてもらい、天国にいるくらい気持ちよかったのです。
わたしは、仕事がいそがしくて、立ち会えなかったお父さんに電話をしました。
「生まれたよ、男の子ですよ」
「でかした!すぐ行くから!」
お父さんは仕事をほうり投げて、病院に駆けつけました。
町中は、クリスマスイブで大にぎわい。
「オレの赤ん坊が生まれたぞ~‼️」
後で聞いた話ですが、お父さんは聖夜に向かって叫んだそうです。道行く人たちに、クスクス笑われたそうです。
「オジさんおめでとう!」「パパだね!」
見知らぬ人たちもお祝いしてくれました!
続く
#統合失調症 #出産#クリスマスイブ