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ファッションは音楽 (プログレッシヴ・エッセイ 第8回)
音楽を聞くという行為はファッションだと思っている。
今、現在、聞いている音楽は、厳密にいうと体が欲するものではなく、少し背伸びしたものだったりする。自分の趣味を盛っているのだ。主義主張・宣言みたいなもので、時に誇張も含まれる。
3歳の頃はNHK教育「みんなのうた」を口ずさみながらも、NHK総合の演歌番組では細川たかし、TBS「ザ・ベストテン」では中森明菜が好きだった。
小3ではヨハン・シュトラウスII世を聞いていた。ロック好きの父がカーステレオでビートルズをかけるのだが、
「ロックはうるさい!」
といってクラシックのカセットに替えてもらったことも。しかしクラシックは音が小さいので何も聞こえなかった。エンジンがうるさい!
小5でディープ・パープルを聞くようになる。
友達と図書館に行くのが日課だったが、ある時視聴覚コーナーにてみんなで『メイド・イン・ジャパン』収録のドラム・ソロを聞いた。ドラムだけが流れるという自体に友達は唖然。
「お前、本当に楽しいのかよ」
楽しいじゃん、と答えたと思うが、図星だった。
高校に入学してからは周りもロックを聞き始めたので、昭和の歌謡曲では岩崎宏美、昭和のサントラでは大野雄二『犬神家の一族』『人間の証明』を聞き始めた。
この頃から「流行している音楽は敵」という仮想敵化し、興味のある音楽以外を一切シャットアウトした。鎖国である。
現在はどうか。ひたすら20世紀の現代音楽ばかり聞いている。ショスタコーヴィチに芥川也寸志、武満徹に伊福部昭。聞いているだけでさっぱり理解できていない。でもいいのだ。音楽は着飾るためのもの。自分を盛れればいい。
先日、ライヴがあるので出発しようとしたところ、妻に声をかけられた。
「寝癖立ってない?
首の周りがヨレヨレのTシャツ着ていくの?
普段着と一緒でしょ?
それでステージ立つの?
少しはファッションのことも気にしたら?」