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同じCDを買う優越感と恐怖 (プログレッシヴ・エッセイ 第14回)

同じアルバムCDをあえて何枚も買うのがプログレリスナーの習性だ。
私もピーター・ガブリエル『II』『プレイズ・ライヴ』『So』はそれぞれ5枚以上持っている。“違いのわかる男”という承認欲求だけのための購買心理。
(そして大抵違いがわからない)

だが、それが無意識の購買行動だと途端に恐怖となる。

「もしかしてアルツハイマー?」

と疑い、自分を責め出す。40歳手前で多くなってきた。

それだけでない。上司の苗字を忘れる、朝のニュースを昼には覚えていない。子供との遊ぶ約束をすっぽかすなど、生活に支障をきたしてしまうことが多々。


その対策として、手帳にすべて書くということを始めた。もうすぐ40歳になる2020年、1月1日のことである。
手帳の左半分にはその日にあったことを日記のように記し、買った本やCDも併記。
右半分には日経新聞で一面の記事と気になるニュースを8つピックアップして書くようにした。

記事はなるべく見出しをそのまま写すのではなく自分なりの言葉に変換する
赤が世界情勢、青が経済、緑が気象・災害、橙が感染症、黄がその他

そして手帳の最後のノート欄には新聞や本・雑誌を読んで、今まで知らなかった言葉や「なるほど!」と感じた記事を記す。これで少しは記憶の定着になり、同じCDも買わないようになるのではないか。

手帳の最後のノート部分、気になる書籍のタイトルを書くことも

奇しくも2020年の1月後半から新型コロナウィルスが蔓延を始め、100年に1度のパンデミックに陥った。刻一刻と迫り来る出口の見えない不安と生活の変化を毎日記録することができ、結果的に役に立つことが多かった。
仕事では上司から、
「先月どんなことあったっけ?」
「前年の今頃は緊急事態宣言中だった?」
などという質問に対して迅速に答えるのにこの手帳を活用。

日経平均終値などとともに
パンデミック中は新型コロナ感染者数(世界・日本)を記入


日経新聞の連載「リーダーの本棚」にて、九州電力社長・池辺和弘氏が座右の書として挙げていたのは「自分のメモ帳」だった。「読書で出合った言葉や、テレビや映画のセリフを書き込」んだメモ帳なのだそうだ。
私も手帳が座右の書となるかもしれない。

気になる記事だったので早速、手帳の最後のノートに書き込む。そして前にはどんなことを書いていたっけかと読み返す。

2023年2月17日「ルイスの転換点」とその意味が。

2023年5月8日「ルイスの転換点」とその意味が。

まったく記憶に定着していないではないか。

また今日もレコード屋に行き、無意識に同じCDを買ってしまう恐怖が頭によぎる。
で、「ルイスの転換点」ってどういう意味?

【参考】
日本経済新聞 2024年4月6日 朝刊31面
「リーダーの本棚」九州電力社長・池辺和弘氏


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