二つの「書」がなくなった日(プログレッシヴ・エッセイ第4回)
2024年1月14日、東京のつつじヶ丘にある書店「書原」が閉店した。
そして同年1月31日、同じく阿佐ヶ谷にある書店「書楽」が閉店した。
書原は2017年まで阿佐ヶ谷に本店があったがそのビルの建て替えで閉店、つつじヶ丘が本店となっていた。
阿佐ヶ谷出身なので書原と書楽に星の数ほど通いつめた。
書原は音楽に強かった。
YMO写真集『ピリオド』、作詞の勉強をした『ピンク・フロイド詩集』、シンセサイザーに関して調べ物をする時にいまだに使う『ビンテージ・シンセサイザー』。
音楽の知識のベースを形作ってくれた。
書楽は雑誌コーナーが充実。
ジミー・ペイジが表紙の『ヤング・ギター』1993年5月号、広告でビンテージ・シンセを探すことに時間を費やした『キーボード・マガジン』1993年10月号。
そして最も影響を受けたのが『月刊プレイヤー』。
人間椅子の和嶋慎治氏による連載「ハードロックギター・ワークショップ」(1993〜1999年)である。
毎月買えるようなお小遣いはなかったので失礼ながら立ち読みで済ますことも少なくなかったが、毎月食い入るように読み耽り、いつかバンドをやりながら雑誌の連載をしたいと夢を抱く。
それから15年以上ののち、夢は叶い、2017年より『モノ・マガジン』で「狂気の楽器塾」という雑誌連載を受け持つこととなった。
思えば和嶋氏よりも長い期間担当している。
書原と書楽は、若者に夢を与えてくれたのだ。
僭越ながら、その恩返しとして、若者が私の連載を読んでこのように夢を抱いてくれたらこの上なく嬉しい。
しかし、若者はこれからどこでどうやって夢を得ることになるのだろうか。
2つの本屋の最終営業日にそれぞれ訪れた。
『モノ・マガジン』が陳列。
特に書楽はかつて『プレイヤー』が置かれていた位置だったことに運命を感じざるをえない。
ともに最後の1冊。書原も書楽も記念に購入した。
売り切れた。
若者の夢を与える場を自ら奪い去ってしまったのかもしれない。