時代を超越する音(プログレッシヴ・エッセイ 第29回)
アルバムを制作している時に最も気にすることがある。
「5年後、10年後に聞いても古臭くないか」
特に、アルバムの仕上げの段階でエンジニアさんには、
「この音の処理は流行の手法ではないですか? 未来に聞くと時代を感じさせる音になっていませんか?」
と聞くようにしている。音楽の進化はテクノロジーの進化と密接な関係があるので、それを完全に排除をするのは難しい。しかし、その姿勢を崩さないことが、結果的に長い期間、聞いていただいていることにつながっているかと思っている。
そもそも、音楽以外でも流行に乗りたくない性分なのである。服装に関してもそう。過去の写真を見て時代がわかってしまうファッションには昔から忌避感があった。
それなのに、唯一乗ったブームがあった。ユニクロブーム。2000年あたりだったろうか。そしてそのブームが去ってもいまだに着続けている。安価で質がいいというのが理由だと思っていたが、新聞を読んでいてふと気がついた。
柳井正会長兼社長がユニクロのお手本としたのが、イギリスのアパレル大手ネクストだった。柳井会長はネクストの1987年秋冬のカタログを宝物として持っており、これを見せながらこう語ったそうだ。
私がユニクロに惹かれたのは時代を超越したデザインを目指していたからなのだと悟った。同時に、音楽においても「時代の超越」を目指していることを再認識させられた。
話変わって、2023年5月、金属恵比須の主催でSFのトークイベントを催し、ミュージシャンでSF小説家の難波弘之さんをお呼びした時のこと。
SF作家・小松左京の小説『虚無回廊』をテーマにした音楽をお互い作っているという話題になった。難波さんは2012年に「虚無回廊」という曲を、金属恵比須はその10年後の2022年「虚無回廊オープニングテーマ」を発表しており、それらを一緒に聞き比べることになった。すると難波さんがボソリとこうおっしゃった。
「金属恵比須の方が古く聞こえますね」
時代を超越しているのではなく、単に古臭かっただけなのか。
そういえば私の服装、上半身はユニクロだが、下半身は30年間ベルボトムだ。
いわゆるパンタロン。
ーー古臭い、な。
写真:飯盛大
(上記イベントのレポートはこちら)
(参考記事)
2024年12月7日(土)昼、ROCK CAFE LOFTで金属恵比須トークイベント決定!
詳細、しばしお待ちください。