今の心をたくさん詰めて 進まない片付け
物にはその人の念が宿っているという。
長年使って来たものには魂が宿るという。
世の中が豊かになり、物が溢れる今の時代。
思い切って処分しない限り、増え続けて行く物の数々。
やがてどこか部屋の方隅に、あるいはタンスや棚の奥に忘れ去られて行く。
この狭い部屋の中で、大切な物って何だろう?
遠い遠い昔の彼氏からの誕生日プレゼント。
小さな石がキラキラ光るネックレス。
誕生日のお祝いをしてもらったあの日。
お互いがまだ20代だったあの頃は、お金に余裕などあるはずもない。
ネックレスはけっして高級な物ではないけれど、
それでも思い出の詰まった、記念のネックレス。
高級なワイングラスはすぐに割れてしまう。
憧れて買った念願のペアのワイングラス。
片方が割れ、一個だけ残ったグラス。
棚の奥には失恋した数だけグラスが残っている。
今では何を話したのか覚えてはいないけれど、
一緒にワインを飲んだあの楽しかった時間は、想念のグラス。
どこかの景品でもらったお皿やカップは、何年経っても欠けることすらない。
会社やお店の名前、ロゴマークが刻まれたカップ。
裏に○○周年○○記念と書かれたお皿。
いつだって捨てられるのだが、なんだか使いかってが良い。
そんなどうでもいい、雑念のカップやお皿たち。
資格を取り、随分と長いこと仕事をしてきた。
日々の技術の進歩はめざましく、勉強をしなければ取り残されて行く。
今や何の役にも立たない古い専門書や資料の山。
多くは捨てたものの、私が生きてきた存在がなくなってしまうようで、最後の少しがどうしても捨てられない。
それは私が社会に、ほんの少しだけ役に立った証。
私の人生の中で専念してきた証拠。
ネコが好きだという私に、友達が手作りしてくれたポーチや巾着袋には、可愛いネコの刺繍がされている。
今はもう持ち歩くことも無くなってしまったけれど。
作った本人すら忘れてしまった、丹念に作られたネコグッツのいろいろ。
今やもう着られないであろう洋服の数々。
お腹まわりはピチピチで、届かないボタン。
背中のファスナーだってやっとの残念な服。
流行遅れかも知れないけれど、それでもお気に入り。
もしかしたら、ダイエットをしたら着れるかも知れないと、
ただ思うだけの執念の洋服。
きっと私が痩せ細った時は、病で病院のベットの上だろうに。
まだまだ捨てられない物がたくさんある。
それでも手に入れたその時、喜びを感じたのならそれはそれで良かったのだろう。
なかなか進まない片付け。
暗い部屋の片隅に、怨念が残りませんように。
とりあえず今日の片付けはこれで断念。
念には今の心がたくさん詰まっている。
お茶にしましょう
フルールゼリー冷蔵庫で冷やしておいたよ
お菓子もちゃんとお腹の中に片付けしないとね
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