商店街の裏通りから初めまして プロローグ
高校を卒業し、田舎から大都会に出て来た田舎娘の私は、新宿のそびえ立つビル群を見上げ驚き、渋谷のファショナブルな人々の多さに驚き、池袋サンシャイン60から見た東京の、どこまでも続く街の大きさに驚いた。
当時ひとり暮らしを初めた場所は、とても住みやすく、下町商店街は洋品店の隣が八百屋さんで、その隣は定食屋さん、その隣は靴屋さん、そしてお惣菜屋さんが数件、と言ったような様々なお店が並んでいた。
コンビニなどは、まだ無かった時代だったから、小さな冷蔵庫と炊飯器、ガスコンロで自炊を始めたのだが、何を作ったのかは覚えていないから、たぶん大した物は作っていなかったのだろう。
古いアパートの狭い部屋は、隣人が柿の種をお皿に入れる音が聞こえるほど壁も薄かったが、それでもそこが私の全てで、私の都会暮らしはここから始まった。
都会のひとり暮らしは楽しくて、時には寂しくて、夜の電車の中で涙を流していても、誰かが気が付くわけでもなく、それがかえって居心地が良かったような気がする。
それは街のカフェで、それぞれの人がそれぞれの時間を過ごしている、そんな感覚に似ていて、ただ周りに人がいてくれるという安心感のようなものだったのかも知れない。
「note」ここは大都会だ。
大きな高いビルが立ち並ぶのを見上げ、都会の人の多さに目がまわり、私は今、いったいどの電車に乗ったらいいのかがわからず、ホームでひとり立ち止まっている。
目の前を行く人々は皆センスが良く、この街に溶け込んでいるかのようで、それは田舎娘の私が、初めて東京に出て来た時と同じような感覚だ。
田舎で着ていた服は、なんだか流行遅れのような気がして、気取って話しているつもりでも、どこかに訛りやイントネーションが違っているような気がするのだ。
かつて田舎娘だった私は、今では田舎婆だ。
今更、気取ってもしょうがないのだけれど、都会の片隅でひっそり、などと言うとかっこよすぎるから、商店街の裏通りで、思うまま気ままに、そしてお気楽な新生活を始めようと思う。
都会は刺激的だ。
好奇心を両手に抱え、猫柄エコバックを提げてこれから私は街に出る。
キョロキョロ、オロオロしている私に声をかけてもらえたら、以前私が暮らしていたShortNoteの仲間に出逢えたら、私は今まで通り、この大都会で生きていけるような気がしている。
お茶にしましょう
隣に引っ越して来たCHA-TOMOと申します
お引越しのご挨拶はチョコを1個ずつ
これからどうぞよろしくお願いいたします