ウサギとカメ 競争に負ける時
スピードがなんと言っても大切な今の時代。
のんびりノロノロと歩いていたら、たちまちこの世の中について行けなくなってしまう。
登り坂であろうと下り坂であろうと、とにかく走らなくてはならない。
カメのようにゆっくりゆっくり進んでいたら、ウサギが追い越して行く。
ウサギは大いに遊び楽しみ寝ていたと思いきや、追ってくるカメを見つけると、またもや走り出す。
この世の中は競争だ。
コツコツ真面目が良しとされていた時代は遠い昔。
今やカメはウサギに負ける時代だ。
賢いウサギになれ。
要領の良いウサギになれ。
そういう私はカメだ。
甲羅の中に閉じこもっていたら進まないということはわかっている。
ウサギには負けたくないという気持ちもある。
しかしウサギを蹴落としてまで勝つことに、意味は感じられない。
そもそも私は競争などしたくないのだ。
私には兄弟がいなかったから、子供の頃ケンカをしたことがない。
お菓子は全て私のものだったから、競争ということを知らなかった。
ゆっくり食べていても取っておいても、食べられてしまうという心配もなかった。
人に分け与えると言うことを知ったのも、ずいぶんと大きくなってからだった。
そんなふうに育った私だから、今でも競争ということがとても苦手で、すぐに諦めてしまう。
敵を倒しポイントゲットする対戦ゲームには参加しない。
きっと更なるランクアップを目指してワクワクする人もいるだろう。
しかしランク付けは、私のモチベーションには繋がらない。
いつの間にか私が食べようと思っていたお菓子が、夫に食べられていた。
ゴミ箱の中のから袋がなんだか虚しい。
また買ってこよう。
私の部屋のクローゼットの中には秘蔵のお菓子が隠されている。
冬眠の準備ではないのだけれど。
今朝は寒くて思わずサムッと声が出た。
するとその時、ふさふさした毛の白いウサギが雪山の中をぴょんぴょんと楽しそうに駆けていくではないか。
カメはただその後ろ姿を追うばかり。
甲羅の中は暖かいけれど、
それでも一歩、一歩だけ今日も前へ進む。
お茶にしましょう
秘蔵のお菓子のおっそわけ
早い者勝ちではないからね