核融合技術の実用化を
米核融合産業協会によると、23年7月時点で世界で43社が核融合に挑んでおり、累計の資金調達額は62億ドルに上る。実現すれば理論上、エネルギーを無尽蔵に取り出せる夢の仕組みである。ビル・ゲイツ、Google、サム・アルトマンも出資している分野とのこと。
本記事では日本での取り組みを紹介する。
ソフトバンク、米核融合新興に出資
ソフトバンクと伊藤忠商事が、青色LEDでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏がCEOを務める米国の新興企業「ブルー・レーザー・フュージョン(BLF)」に出資しました。この企業は、独自のレーザー技術を使用して核融合による安定した発電を実現し、2030年の商用化を目指しています。AIの普及によるデータセンターの電力消費増加の背景下、核融合は脱炭素エネルギーの切り札として期待されています。BLFは創業から1年余りで約56億円を調達し、研究開発を日本と米国で進めています。また、BLFのレーザー技術は医療や通信、素材加工など他分野にも応用可能です。核融合技術は無尽蔵のエネルギー源とされ、世界中で実用化に向けた動きが活発になっています。
青色LEDとは?
青色LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)は、青色の光を発する半導体デバイスです。LEDは電気を光に変える電子部品で、赤や緑など色々な色がありますが、青色LEDの開発は特に技術的な挑戦でした。
青色LEDの開発が重要だった理由は、青色の光を使って白色光を生成することができるからです。赤、緑、青の光を組み合わせることで、実質的に白色の光を作り出せるので、青色LEDの発明はエネルギー効率の良い白色照明への道を開きました。これにより、LED照明は家庭や公共の場所で広く使用されるようになり、電力消費を大幅に削減することに貢献しました。
青色LEDの開発に成功したことで、1990年代以降の照明技術に革命をもたらし、エネルギー使用の効率化だけでなく、ディスプレイ技術の向上にも大きく寄与しました。この技術的なブレークスルーにより、関連した科学者たちはノーベル物理学賞を受賞するなど、その業績は世界的に高く評価されています。
大阪大学発のEX-Fusion
この記事は、核融合発電の開発に取り組む大阪のスタートアップ企業、エクスフュージョンのCEO、松尾一輝氏へのインタビューを紹介しています。核融合発電は、燃料の液滴を高出力のレーザーで圧縮・加熱することで、核融合反応を起こしエネルギーを生成する技術です。この方法は、発電部分がレーザーと独立しているため、小型化がしやすく、燃料の効率的な使用が可能です。
レーザー核融合研究は50年の歴史があり、エネルギー出力が投入エネルギーよりも多い「エネルギーゲイン」を達成した例があります。日本はレーザー核融合研究で世界をリードしており、大阪大学では、より高効率で安定した核融合を可能にする「高速点火方式」の研究を行っています。
しかし、実用化にはまだ課題があり、精密なタイミングでレーザーを液滴に当てる技術や、連続で液滴を射出する技術が必要です。レーザー技術は産業基盤としても重要であり、宇宙デブリの除去など、核融合以外の応用も期待されています。
日本政府は核融合発電への支援を強化しており、様々な核融合研究に資金提供するムーンショット型研究開発制度を予定しています。核融合発電は燃料が少なくとも膨大なエネルギーを生み出す可能性があり、発電時にCO2を排出しないため、環境に優しいとされています。ただし、実用化には長期の研究開発が必要であり、持続的な関心と支援が重要とされています。
宇宙デブリとは?
宇宙デブリとは、宇宙空間に存在する人工的なゴミや残骸のことです。これには使われなくなった衛星、ロケットのステージ、衛星同士や衛星とデブリの衝突によって生じた破片などが含まれます。宇宙デブリは、大小さまざまなサイズがあり、数は数十万から数百万個にも及ぶと推定されています。
宇宙デブリは、宇宙飛行士や現役の衛星、国際宇宙ステーション(ISS)など、宇宙空間で活動する人や機器にとって大きなリスクをもたらします。デブリは非常に高速(時速数万キロメートル)で移動しており、その速度で衝突すれば、たとえ小さな破片であっても大きな被害を引き起こす可能性があります。
この問題に対処するため、宇宙機関や研究機関では宇宙デブリの監視、追跡、そして可能な限りの除去や回避戦略の開発に取り組んでいます。しかし、宇宙デブリを効果的に管理し、将来の衝突リスクを最小限に抑える方法を見つけることは、宇宙活動における重要かつ挑戦的な課題の一つです。