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【富士山お中道を歩いて自然観察】4 極相林のギャップ更新

(この記事は、観察マップ地点4 についての解説です)
遊歩道はコメツガとシラビソの森の中を進みます。森の中で大きな倒木を見つけたら上を見上げてみてください。ぽっかりと穴があき、空が見えているかもしれません。その穴が林を維持するための鍵になります。

極相林が維持されるためには、親木のあとに後継樹が育つ必要がある。しかし、一般に極相林内は暗く後継樹が育ちにくい。

極相、極相林
植生の遷移が進んで、最終的にそこの気候に最も適した植生に達すると安定して維持される。その時の植生を極相という。日本列島は十分な降水量に恵まれるため、極相は森林(極相林)となる。

後継樹
極相林を構成する樹木の種子から成長した若木のことで、親木の陰では成長は遅いが、耐陰性が高いので、ある程度の期間は生き続けることができ、親木が枯れて明るくなる機会を待っている。

暗い極相林

林冠を覆う高木(林冠木)が寿命や台風の強風などで倒れると、林冠に空が開き、林床まで太陽光が射し込む明るい場所ができる。これはギャップといわれる。

林冠、林冠木
森林の最上層を占める高木の葉の集まりをいう。

林冠にできたギャップ
ギャップによって林に光が差し込む

倒木でギャップができると、差し込んだ光で後継樹(稚樹)の光合成が促進され成長が速まる。このようにして後継樹が成長し親木の跡を継いで森林が世代交代を続けることをギャップ更新という。

ギャップ形成後は後継樹が一斉に伸びる

極相林のギャップ更新メカニズム

  1. 極相林の林冠は覆われ林床は暗い

  2. 倒木によってギャップが形成される

  3. 林床は明るくなり後継樹の伸長成長が盛んになる

  4. 後継樹の成長により林床は再び暗くなる

極相林のギャップ更新イメージ
ギャップ形成から数年が経過するとツリー型樹形の稚樹が林床を占める

次回(地点5)は、いよいよ森を抜けて開けた場所に出ます。雪が積もったように白く見える地面が目につくでしょう。その正体についてのお話です。

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