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【富士山お中道を歩いて自然観察】番外編 マツ科いろいろ
富士山では以下のマツ科針葉樹が生育する。
モミ属:シラビソ、オオシラビソ、ウラジロモミ
マツ属:ヒメコマツ、アカマツ
トウヒ属:トウヒ
カラマツ属:カラマツ
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垂直分布
カラマツは標高2,300 m付近で森林限界を形成している。
お中道や標高1,700m以上の亜高山帯の極相林では、シラビソとコメツガがほとんどを占めている。ウラジロモミの分布地はそれらより低く、標高1,500m付近である。オオシラビソは日本海側の山に多いが富士山では少ない。ヒメコマツとトウヒは、まとまって森林を作ることはなく、個体がシラビソ林の中にみられることが多い。
スバルラインの入口付近の剣丸尾溶岩上にはアカマツ林が成立している。
極相林
植生の遷移が進んで、最終的にそこの気候に最も適した植生に達すると安定して維持される。その時の植生を極相という。日本列島は十分な降水量に恵まれるため、極相は森林(極相林)となる。
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お中道周辺で森林を形成する3種
カラマツ
亜高山帯に生える落葉針葉樹。日当りのよい乾燥したところを好み、火山荒原や山崩れ跡地にいち早く侵入する。富士山では遷移初期に侵入する代表的なパイオニア植物。
パイオニア植物
遷移の過程で、初期のまだ植生が十分に発達していない段階で定着・成長できる植物種のこと。一般に、明るい場所を好み、乾燥や栄養不足に強い。
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お中道周辺には貴重な天然林が広がる。カラマツ林に入ると、ツンとする癖のある松ヤニの香りがする。10月の富士山の山肌はカラマツの黄葉で金色に染まる。
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カラマツの枝には、長枝と短枝がある。
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長枝は長く伸び枝を広げる役割をする。長枝の葉はらせん状につく。
短枝は年に数 mmしか伸びない。短枝の葉は20枚ほどが束になってつく。短枝のくびれ1本は1年分の伸び。
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シラビソ
亜高山帯の極相林を形成する常緑針葉樹。樹高20mほどになる。樹形はクリスマスツリーのような形。
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4合目付近まで下ると直径30cm以上の大木が大森林を作っている。お中道を歩くと途中若いシ ラビソ林を横切ることになる。 常緑葉のため森林内は薄暗い。稚樹は耐陰性が高く、林床でギャップ更新の機会を待つ。
ギャップ更新
森林の樹木が寿命や台風の強風などで倒れて枯れると、その樹木が占めていた場所があいて、太陽光が射し込んで明るくなる(ギャップ)。すると、親木の陰で成長が抑制されていた稚樹の成長は促進される。このようにして稚樹が成長し親木の跡を継いで森林が世代交代を続けることをギャップ更新という。
詳しくは、地点4 参照。
松ヤニは柑橘類のようなさわやかな香りがする。お酒のジンライムを思い浮かべる人も。
各枝の先端に翌年の枝が生えるため、枝は毎年規則正しく伸びる。年枝を遡ることで樹齢を読み取れる(詳しくは次回の記事「3 シラビソの樹形」を参照のこと)。
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カラマツやコメツガと異なり、松ぼっくりは熟すと樹上でばらけてしまう。
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コメツガ
亜高山帯で森林をつくる常緑針葉樹。急斜面や岩が露出しているなど乾燥しやすい場所に多い。御庭や奥庭の遊歩道はコメツガ林の中を進む。
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樹高は20mほどになる。一方でカラマツと同じく、風衝地では幹がねじれた低木状になることも(低木状のカラマツについては、後日の記事「6 強風地帯」を参照のこと)。枝は不規則に伸びるので、樹形はシラビソほどきれいなクリスマスツリー形にはならない。木の先端が曲がっていることからも伺える。シラビソ林同様、森林内は薄暗い。
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シラビソとコメツガの見分け方
枝を裏返し、葉の付け根をじっくり見てみよう。
シラビソの葉は付け根から斜め上に向かっている。葉の長さは2~2.5 cm。
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コメツガの葉には葉柄があり、葉柄が枝に沿ったのち葉はへの字に曲がっている。葉の長さは1~2 cm。
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実生を探してみよう
足元をじっくり見てみると、発芽して1〜2年目の小さな実生を発見できるかもしれない。これが数十年〜数百年後に森林になると思うとロマンを感じる。
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葉は針状で柔らか
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葉はくわのように並ぶ
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葉は風車のように並ぶ
次回(地点3)は、シラビソの稚樹の樹形変化についてのお話です。シラビソの枝ぶりについて深掘りしていきます。