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【富士山お中道の生物図鑑】 フジハタザオ

  • 見られる場所・・・火山荒原

  • お中道での花の時期・・・5月下旬〜6月上旬

フジハタザオ

アブラナ科ハタザオ属
学名:Arabis serrata
〈富士旗竿〉
同定のポイント/  ①花は白色、時に帯紫色。花弁は長さ6〜10 mm。②茎や葉に単純毛が多く、茎葉の基部は茎を抱く。

山と渓谷社 「山渓ハンディ図鑑8 高山に咲く花」2002

フジハタザオは高山帯の砂礫地に生える多年草です。十字架状の白い花をつけます。
葉は厚ぼったく、ざらっとした触り心地で、これは高山の草本類では珍しい冬も葉をつけている常緑葉です。

お中道での草本の開花は6月中旬以降が多いのですが、フジハタザオの花はすでに5月下旬には見られます。
フジハタザオは葉をつけたまま越冬するため、葉を作る手順を飛ばして、雪解け後すぐに花の準備ができるのでしょう。

駐車場脇で咲くフジハタザオ。
花びらのつき方は菜の花に似ており、同じアブラナ科の植物であると分かる。

花が咲いた後は細い角果(種子の入った筒状の袋)をつけます。角果を見つけたらそっと裏返してみてください。
角果の日が当たる面(上面)赤褐色ですが、裏返すと緑色になっています。日が当たる面を赤褐色にして、高山の強い光(紫外線)から種子を守っていると思われます。

8月中旬に撮影した角果。

富士山にはフジハタザオ、フジアザミ、フジイタドリのように、「フジ」と名のつく植物が数種います。
しかし、これら植物は固有種ではないようです(私は分類学に詳しくないのでよく分かりません。亜種や変種にあたるのでしょうか)。

最後の山頂からの噴火は約2,300年前ですし、1,000年前は盛んに活動していました。このように富士山の歴史は非常に新しく、新しい種が分化するに十分な時間を経ていないのが富士山に固有の植物がない理由です。

出典: 山梨県富士山化学研究所「富士山自然ガイドブック」2016 

「富士山のものを基準に同定したから」、あるいは「富士山で多く見られるから」が理由のようです。


富士山お中道に興味を持たれた方は、ぜひ連載第1弾もご覧ください。

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